研究課題/領域番号 |
19K17117
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研究機関 | 奈良県立医科大学 |
研究代表者 |
岡村 和哉 奈良県立医科大学, 精神医学講座, 助教 (20635734)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 社会経験 / 内側前頭前野 / Parvalbmin陽性介在ニューロン |
研究実績の概要 |
交付申請書の2019年度の研究実施計画のとおり、社会的隔離マウスを作成し、生後21日、生後35日における、内側前頭前野第5層の特定の錐体細胞(PH cell)への興奮性入力、抑制性入力を電気生理学的手法(Whole-cell patch clamp法)を用いて測定した。まず錐体細胞を分類せずに評価すると、興奮性入力、抑制性入力の振幅や頻度ともに隔離飼育、集団飼育群間で差はみられなかった。また、皮質下に投射すると考えられる錐体細胞(PH cell)を分類して評価したが、これも同様に差がみられなかった。我々は、生後65日において興奮性入力が隔離飼育群で低下していること(Yamamuro et al. Cereb Cortex, 2018)、また同成体マウスにおいて抑制性入力が増加していること(Yamamuro et al. Front Cell Neurosci, 2020, 申請者は共著者)を報告したが、この変化が生後35日ではまだ起こっていないことを発見した。また生後35日における同細胞の活動電位も変化を来していなかった。 次に、2020年度の研究実施計画の一部である、Parvalbmin陽性介在ニューロンが蛍光で識別されるGAD67-GFPマウスを使用し、生後35日のParvalbmin陽性介在ニューロンからWhole-cell patch clamp法を用いてその活動電位、興奮性入力を測定した。その結果、活動電位には隔離・集団飼育群で差はないものの、その興奮性入力では、隔離飼育群では興奮性入力の頻度が増加していることを見出した。 上記から、当初の仮説のとおり、隔離飼育による影響は抑制性細胞がまず影響を受けている可能性を見出している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
申請課題の進捗状況については、研究実施計画書のとおりに概ね進んでおり、2020年度のParvalbmin陽性介在ニューロンの電気生理学的性質の評価についても年度末に開始できている。また、実験結果も当初の仮説と大きく異なるものではなく、研究計画の変更の必要性も現時点では認めない。 上記から、申請研究課題はおおむね順調に進展していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
実験実施計画の2020、2021年度のPV-INの機能変化について、引き続き電気生理学的手法を用いてParvalbmin陽性介在ニューロンの活動電位、興奮性入力を測定する。現時点で、Parvalbmin陽性介在ニューロンへの興奮性入力が増加しているが、その入力元のひとつと考えられる内側前頭前野第3層の錐体細胞の電気生理学的性質も評価を行うことを考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
2019年度は実験実施が比較的順調に進展し、実験に必要な物品のための資金が増えたため前倒し請求を行った。実験の過程で上記の金額が余ることとなり、次年度使用額が生じた。この資金は2020年度に使用する予定である。
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