研究課題
本研究は、「老年期精神障害」として総括される高齢者の多彩な臨床類型(例:老年期における双極性障害や妄想性障害)について、「レビー小体病」を背景疾患に持つ一群ではどのような臨床的特徴があるのか、同定することを目的としている。初年度(2019年度)はまず、4カ年計画の初段階として、当施設物忘れ外来初診患者のうち、認知障害や精神病症状が出現する以前の「(レビー小体病)前駆症状」に注目して、その特徴を検討した。レビー小体型認知症(dementia with Lewy bodies, DLB)の前駆症状としては、「立ちくらみ」「便秘」「嗅覚異常」「レム睡眠行動異常」が既に明らかとなっている。さらに、「抑うつ」はDLBの精神症状として重要で、しばしば早期から出現することが知られているため、これも前駆症状の確認項目として加え、老年期うつ病評価尺度の初診時の得点を確認した。これら5種類の前駆症状について7つの質問項目に集約して外来初診連続症例約500例について聴取をした結果、およそ14%で4項目以上が合致することが分かった。前駆症状を多く有する群、すなわちレビー小体病を背景疾患に持つ可能性の高い一群については、さらに画像バイオマーカー(MIBG心筋シンチグラフィ、ドパミントランスポーターSPECT)の様態を確認したところ、多くの症例でレビー小体病を支持する結果が得られた。神経心理学的検査に関しては、全般的認知機能(改訂長谷川式簡易知能評価スケール、MMSE)スコアの程度に依らず前駆症状が多く当てはまる症例が存在することが分かった。また、老年期うつ病評価尺度について、「抑うつ以外の前駆症状が多く当てはまる群」では「抑うつ以外の前駆症状を少数持つ群」よりも高得点を示すことが分かった。
2: おおむね順調に進展している
高齢者専門外来コホートにおいて、臨床的特徴としてレビー小体病の前駆症状に着目したデータを収集する目的を達成でき、レビー小体病の疑いがある群について神経画像検査を実施できたため。
初年度に検討した前駆症状に関するデータを踏まえ、令和2年度には老年期精神障害症例群に対して神経画像、神経心理検査実施を予定する。
成果発表を予定していた学会参加を見合わせたため。
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精神科治療学
巻: 35 ページ: 207-212
巻: 34増 ページ: 74-76