本研究では、統合失調症新規病態仮説「脂質生合成代謝異常-脳梁形成・機能不全仮説」の検証を目指した。ヒト死後脳解析より、統合失調症患者の脳梁では複数の脂質代謝関連遺伝子や転写因子、ミクログリアマーカーの発現が変動していることがわかった。さらに、変動がみられたいくつかの脂質代謝関連遺伝子や転写因子の上流に、転写因子NFATC2が位置することを予測した。また、新規に作成したNfatc2 KOマウスは一部の統合失調症様行動異常を示した。これらのことから、NFATC2を起点とした遺伝子ネットワークとミクログリアの異常が関連した脂質組成変化が、統合失調症病態の形成に関与する可能性が高まった。
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