研究実績の概要 |
神経認知障害の認知機能に対する新たな介入手法の開発は、社会的にも緊急課題である。経頭蓋直流電気刺激(tDCS)は、我々が行った系統的レビューおよび先行研究から、高用量(回数の増加、高強度)、認知機能トレーニングと並行して行うことが、認知機能が効果に影響をおよぼす可能性が示唆された。これらの背景を踏まえつつ、我々は、tDCS(2mA, 20min/回、2回/日、週5回)を認知機能トレーニング(計算課題、漢字課題)と並行して行い、安全性・実現可能性、および認知機能の改善効果を検証する予備研究を計画した(ClinicalTrials.gov NCT03050385)。我々が検証した予備研究では、介入群の脱落率は0%で、治療を必要とする有害事象は認めなかった。偽刺激群と比べ、本刺激群では、ADAS-Cog(Alzheimer's disease assessment scale - cognition)のベースラインからの変化量は刺激直後で1.61、刺激後2週間で0.36の改善を認めた(Inagawa T, Yokoi Y, Narita Z, Maruo K, Okazaki M and Nakagome K (2019) Safety and Feasibility of Transcranial Direct Current Stimulation for Cognitive Rehabilitation in Patients With Mild or Major Neurocognitive Disorders: A Randomized Sham-Controlled Pilot Study. Front. Hum. Neurosci. 13:273)。有効性の検証の上では、各群 46例、両群92例が必要であることが明らかになった。さらに、認知機能全体、各種認知機能ドメインを包括的に評価する尺度を用いて検証する必要があり、認知機能の評価の上で、RBANS(Repeated Battery for the assessment of Neuropsychological Status)も並行して使用し、評価する方針とし、現在本研究を開始している(jRCTs032180016)。
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