研究実績の概要 |
本課題は、プラズマローゲンの摂取による精神疾患の新たな治療法の可能性を検討するため、精神疾患モデルラットを用い、対照ラット群と精神疾患モデルラット群、0.1%重量プラズマローゲン添加飼料投与を行なった精神疾患モデルラット群とで行動試験や各種解析を実施する前臨床研究である。 当初計画においてラットでの「社会的隔離ストレスモデル」を用いて検討を行なった結果、ストレス負荷による有意な行動変容は観察されなかった。このことから、我々は多様な精神疾患様行動を引き起こすことが知られ、多くの先行研究でも用いられているリポポリサッカリド (lipopolysaccharide, LPS) 投与モデル動物における検討を併用し、① 通常飼料+7日間生理食塩水投与群(腹腔内)・② 通常飼料+7日間LPS投与群・③ 0.1%プラズマローゲン添加飼料+7日間LPS投与群、の3群を設定した計画を追加した。 これらのラットにおいて行動解析を実施したところ、群間の結果に差異の傾向が認められた。さらに抗うつ作用等の検討のため[18F]Fluorodeoxyglucose (FDG) をトレーサーとした陽電子断層撮像 (positron emission tomography,PET) を上記①~③の3群について実施し、[18F]FDG の脳部位ごとの取込みについての検討を行なったところ、行動解析結果と同じく群間での結果に差異のある傾向が認められたものの、統計的に有意な差を得るまでには至らなかった。 プロトコールを見直して再度の行動試験を進めた結果、LPS投与ラット群では対象群と比較して恐怖条件付け試験における不動時間の延長が認められたが、プラズマローゲン添加飼料投与ラット群では対照群との差は認められないという結果が得られた。本検討から、プラズマローゲンの摂取がトラウマ症状の予防に有効である可能性が示唆された。
|