研究課題/領域番号 |
19K17126
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
田中 創大 北海道大学, 工学研究院, 助教 (00826092)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | スキャニングビーム / モンテカルロシミュレーション / 陽子線CT画像 |
研究実績の概要 |
本研究の目的はスポットスキャニングビームの特性を生かした高精度の陽子線イメージング手法を考案し、臨床に必要な精度の陽子線CT画像取得法を確立することである。2020年度は、主にモンテカルロシミュレーションをベースとして、画像改善手法の開発と検証を行った。2019年度に構築したParticle and Heavy Ion Transport code System (PHITS)を用いたモンテカルロシミュレーション環境を用いて、様々な形と物質から成る人工物ファントムや人体X線CT画像をボクセルファントム化した被写体に対しての陽子線イメージングデータを取得した。その際、従来の一様照射野による陽子線透過画像だけでなく、スキャニングビームのスポットごとのデータを取得し、本研究独自のスポットごとのデータを用いた解析手法の開発に用いることができるデータを蓄積した。また、本システムとは異なる陽子線イメージングシステムにおいて考えられている陽子線の軌跡を考慮した画像補正法を参考にして、スポットごとに陽子線軌跡補正を行うことで画像劣化要因である陽子線線量データの側方散乱成分を除去する新たな解析的な画像補正手法を考案し、実装した。先に述べたモンテカルロシミュレーションにより生成されたデータを用いて、考案した解析的な画像補正により得られた補正陽子線CT画像を従来の陽子線CT画像と比較し、定量的な評価を行った。また、解析的手法とは異なる画像補正法として、ディープラーニングを用いた画像補正法の研究開発に着目し、ディープラーニングを専門とする研究者とともに研究開発を開始した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
基本的に申請時に提出した計画に沿って研究開発は行われており、順調に研究開発が進んでいることから、現在までの研究開発の達成度はおおむね順調に進んで いると評価した。まず、2019年度に構築したモンテカルロシミュレーション環境を用いて、人工物ファントムや人体CT画像をベースとしてボクセルファントムデータを用いた様々なシミュレーションデータ取得に成功し、高精度な陽子線CT画像取得のための画像補正法の検討に用いることができた。また、異なるシステムで用いられている画像補正を参考にして、本システム用の新たな画像補正法を考案し、その実装と定量的な評価を行えたことは大きな進捗であった。さらに解析的手法にこだわらず、現在盛んに研究されている深層学習を用いた画像補正法の研究に着手したことは、今後の画像補正手法開発の次のステップになった。ソフトウェア上の研究は非常によく進んでいるが、コロナウイルスによる昨今の状況により実験による検証が思うようにできず、今後の課題となった。
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今後の研究の推進方策 |
考案した画像補正法について、さらなる定量的な評価と手法改善を行い、実際の臨床利用におけるインパクトを検証するとともに、学会発表や論文発表などのアウトプットを行う。また深層学習を用いた画像補正法について、モンテカルロシミュレーションデータを活用しながら、開発と検証を行っていく。2020年度に実施が滞った実験に関することとして、2019年度に課題として挙げたシンクロトロン照射の時間構造を考慮したスキャニングビームのスポットごとのデータ取得の実施をし、Modulation transfer function (MTF)測定用ファントムやElectron density phantomの撮影をすることでMTF計算や多種物質の画素値解析により空間分解能と画素値精度を評価する。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナウイルスによる昨今の状況により、学会参加や実験実施のための旅費使用がなかったため、次年度での旅費使用とした。また、同様に旅費使用が困難な状況である場合、実証実験用ファントム作成費や高性能計算機の購入費として使用する。
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