本研究の目的はスポットスキャニングビームによる高精度の陽子線イメージング手法を開発し、臨床に必要な精度の陽子線CT画像取得法を確立することである。モンテカルロシミュレーションコードであるParticle and Heavy Ion Transport code System (PHITS)を用いて画像改善手法の開発と検証を行うとともに、量子科学技術研究開発機構の新治療棟において実験によるスキャニングビームを用いた粒子線イメージングの実証実験を行った。なお、2021年度より所属機関の変更があり、陽子線のみでなく、実験環境として用いることができる炭素線も対象としている。これにより本研究は陽子線だけでなく炭素線まで拡張することができた。シミュレーションによって得られた投影データに対して、スポットごとのビームの広がり情報を用いた繰り返し計算により粒子線軌跡を加味する補正を行い、画像劣化要因である多重クーロン散乱成分を除去し、画質向上を行った。ただ、その対象は単純な構造の被写体にとどまり、より複雑な構造の被写体に対する補正に関しては補正に限界が存在し、今後のアルゴリズムの向上が必要であると考えられた。また、実験においてスポットごとの投影データを取得する検出システム系を開発した。ミリ秒オーダーで照射されるスポットの情報をスポットごとに取得するため、照射システム側でスポットごとの照射をコントロールポイントとして独立する照射できるようにし、その上でコントロールポイントごとに撮影可能なカメラシステムを同期することによって、スポットごとに投影データ測定できるシステムを構築した。
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