放射線抵抗性の腫瘍に対して、放射線照射の前にオキシドールを腫瘍内に局所注入 することで酸化を促進させる放射線増感療法(KORTUC)が、直接穿刺が比較的容易な乳癌を主として行われるようになってきている。本研究では日本白色ウサギVX2大腿腫瘍モデルを用いて、予め留置しておいた動注ポートよりオキシドールを腫瘍の栄養動脈内に注入し、それに併せて放射線治療を行い、従来のKORTUC療法や放射線単独治療と抗腫瘍効果について比較検討した。 結果的には明らかな有意差は認められなかったものの、オキシドール動注群では放射線単独治療群と比較し腫瘍増大が抑えられ、アポトーシスが高頻度に起こる傾向がみられたが、KORTUC療法と比較すると抗腫瘍効果はやや劣っていた。オキシドールの動脈内注入に伴う重篤な合併症はみられなかった。 今回の結果から血管内治療の技術を用いることで、カテーテルを腫瘍の栄養動脈内まで挿入し、放射線増感剤であるオキシドールを経カテーテル的に動脈内注入することができ、直接穿刺が困難な深部に位置する腫瘍に対しても放射線治療の効果をある程度増強できる可能性が示唆された。有意差が出なかったことに関しては、VX2腫瘍はもともと放射線感受性が高い腫瘍のため、各治療群で差が出にくかった可能性がある。 今後はIVR手技として既に確立されている動注リザーバーポート留置術と組み合わせて、様々な部位の腫瘍に応用可能となることが期待される。ただし、直接穿刺によるオキシドールの局所注入と比較すると放射線治療の増感作用は弱く、動注するオキシドールの量や濃度についての検討や、バルーンカテーテルを用いて血流を遮断し、オキシドールを腫瘍内に停滞させる等の投与法の工夫が必要であると考えられた。
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