研究課題/領域番号 |
19K17137
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
井上 実 京都大学, 医学研究科, 助教 (20826010)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 放射線治療 / 血清アルブミン / 活性酸素種 / 生体レドックス / トランスレーショナルリサーチ |
研究実績の概要 |
がんに対する放射線治療は、がん種や進行度から規定される照射範囲・線量に基づいて行われる。しかし、同じがん種または進行度であっても、がん細胞の放射線感受性は個々の症例で異なる。実際、中咽頭がんでは、ヒトパピローマウィルス(HPV)感染の有無が放射線感受性と関連することが知られているが、がん種限定的な因子ではなく、放射線治療の対象となるがん種に幅広く適用できる放射線感受性の予測因子が特定できれば、治療効果予測に基づく放射線線量や併用抗がん剤の事前調整を通じて、より低毒性で高根治率な放射線治療が提供できるようになる。 電離放射線による細胞障害メカニズムにおいて、活性酸素種によるDNA損傷は不可欠なステップである。よって活性酸素種を除去し得る遊離チオールは、放射線の殺腫瘍効果を減弱する可能性がある。血清アルブミンは、血漿中に最も豊富に存在する遊離チオール源であり、肝・腎疾患などでは非遊離チオール(酸化型アルブミン)の割合が上昇する。がんにおいても、酸化型アルブミン優位な症例が見られ、好中球特異的な細胞死に寄与するが、血清アルブミンの酸化とがんの放射線感受性との関連性は未だ不明である。本研究では、『血清アルブミン酸化度は放射線治療の殺腫瘍効果に相関する』との仮説を立て、以下の研究を行った。 通常培養下の膵臓がんおよび大腸がん細胞において、血清アルブミンの酸化度を変調させ、放射線照射後のDNA損傷の程度および細胞生存割合を検討した。予想に反して、細胞株によっては血清アルブミンの酸化度と上記評価項目との相関性は確認できなかった。そこで、通常培養環境ではなく、生体中の腫瘍に近い培養環境を用いて、再度、上記評価項目を検証したところ、血清アルブミンの酸化度と上記評価項目との相関性が確認できた。担がん動物モデルにおけるアルブミン酸化法の最適化も完了し、照射実験を予定しているところである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
予想に反した結果が得られた際、文献検索とその検証を積極的に行い、実験方法を修正し得たため
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今後の研究の推進方策 |
In vivoの実験ならびにヒト検体を用いた研究計画を実施する。
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次年度使用額が生じた理由 |
実験方法の変更に伴い、購入を予定していた遺伝子改変マウスを用いない実験計画に修正したため。上記差額分は、本年度の実験に用いる試薬購入費として使用する。
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