研究初年度に、乳癌患者において涙液中のmiR-2とmiR-200が、コントロール群である健常者の涙液と比較して有意に高発現を呈し、 診断および予後予測におけるバイオマーカーになりうる可能性が示唆され論文報告に至った。 次年度はその結果をもとに動物実験モデルを作成することによって、涙液による腫瘍由来のエクソソームの挙動を探り、癌診断における涙液の有用性の検討を進めた。ヌードマウスを用いてヒト由来の膵癌細胞株であるMIAPaCa-2や大腸癌細胞株であるHCT-116皮下に移植して血液および涙液を採取してそれぞれの癌細胞由来のエクソソームを計測することを試みたが血液、涙液とも癌細胞由来のエクソソームの検出が微量であった。この理由として、エクソソームの検出手法や血中により癌細胞が移行しうる移植方法など問題点をそれぞれ仮説として挙げ、最終年度にかけ検討を行ったが、検証が可能なエクソソーム検出の状態には至らなかった。 臨床症例においては主に眼瞼悪性リンパ腫において涙液の検討を行い、悪性腫瘍由来のエクソソームの検出は行ったが、症例集積が少なく、有用なマーカーの候補の同定に至っていない。 本研究においては涙液が癌診断および予後予測を導くツールになりうることを示した点で、低侵襲かつ簡便な診断手法の確立において重要な役割を果たしうると考えられ、今後引き続き様々な癌腫においても症例の集積とともに有用なバイオマーカーの同定を目指していきたい。
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