本研究の目的は,高分解能3D CESTイメージングによるmulti-pool解析の開発と臨床応用である.高速撮像技術である圧縮センシングを併用することで臨床応用可能な3D CESTイメージングのシークエンス作成が可能であった. ファントムおよび脳腫瘍患者において,従来の2D CESTイメージングと本研究にて考案した3D CESTイメージングは同等の信号強度を呈することを証明した.神経膠腫の悪性度評価において,考案した3D CESTイメージングは2D CESTイメージングと同等の診断能を有することを証明した.また,病理診断にて高悪性度と診断された症例が,1段面しか取得できない2D CESTイメージングでは低悪性度を示唆する信号強度であったのに対し,9断面取得可能な3D CESTイメージングは高悪性度を示唆する信号強度を呈していた.3D CESTイメージングによる複数断面のCESTイメージング取得が有用であることが明らかになった. 最終年度では,神経膠腫患者において,3D CESTイメージングからamide proton transfer(APT)とnuclear Overhauser effect(NOE)をそれぞれ検出することを試みた.APT画像の信号強度は神経膠腫の悪性度が高くなるにつれて大きくなった.NOE画像の信号強度は神経膠腫の悪性度により大きな変化はなかった.一方,NOE画像は正常白質よりも神経膠腫において低くなる傾向があった. 本研究にて考案した3D CESTイメージングは,複数断面およびAPT画像とNOE画像の各種コントラスト画像を用いることで,脳腫瘍患者の診断精度向上につながると考える.
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