本年度は、中咽頭扁平上皮癌の放射線治療の結果に影響を及ぼす腫瘍免疫に関与するタンパク質の発現の影響を検討した。 「方法」:当院で中咽頭癌に対して施行した根治的放射線治療70症例の治療前生検標本において、CD8陽性細胞傷害性T細胞が認識する癌細胞のHLA classⅠ抗体、制御性T細胞のマーカーであるFoxP3抗体を用いて免疫染色を行い、p16や放射線治療成績との関連を検討した。「結果と考察」:p16陽性は37例で全体の52.9%であった。p16陽性群は陰性群と比較し、FoxP3陽性割合が高い傾向(p=0.092)を認めた。HLA classⅠはp16との相関関係は見られなかった。放射線治療成績において、FoxP3高発現群は低発現群と比較して全生存率ではp=0.043、無増悪生存率ではp=0.016と有意に予後良好であった。一方でHLA classⅠでは高発現群と低発現群の間に全生存率、無増悪生存率ともに有意差は認めなかった。多変量解析では化学療法などの併用療法の有無やTNM stageの臨床因子が独立した予後予測因子となり、免疫染色の結果は独立した予後予測因子とはならなかった。以上より、中咽頭癌の放射線治療前生検標本において、FoxP3が多く浸潤している症例で有意に予後良好であることが示された。先行研究においてHPV関連腫瘍ではFoxP3が高発現である腫瘍の方が治療成績が良好であることが報告されており、本研究でも同様の結果が得られた。p16など従来の予後予測因子に加えることで治療成績の予測精度の向上につながる可能性があると思われた。
|