乳房MRIはガドリニウム製剤を用いた造影MRIが評価の主体として用いられてきたが,近年ガドリニウムの神経系組織への蓄積が問題となり,非造影非侵襲的な撮像法の開発が求められている.電気伝導率(conductivity)は物質中における電気伝導のしやすさを表す物性値で,体外式プローブによる実験で悪性腫瘍では正常組織に比べconductivityが高いことが報告されてきた.近年,非造影MRIの位相画像からconductivityを算出する手法が開発され, Magnetic Resonance Electric Properties Tomography (MREPT)と呼ばれている.本研究の目的は,MREPTを含めた非造影乳腺MRI撮像プロトコールを確立することである.具体的には,①MREPT至適撮像法の検証,②新鮮摘出標本のconductivity実測値とMREPT測定値の対比による測定精度の検証,③MREPTと既存の非造影乳腺MRI撮像法(拡散強調画像)の組み合わせによる良性悪性の鑑別能の確認,を行う.われわれは,乳腺においてturbo spin echo (TSE)法の位相画像を用いたMREPT初期検討を行い, conductivityは悪性病変で良性病変より有意に高いことを確認した.dynamic-contrast enhanced (DCE)-MRIとの比較ではMREPTの良悪の診断能はやや劣っていた.
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