研究課題/領域番号 |
19K17164
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
子安 翔 京都大学, 医学研究科, 特定病院助教 (80781913)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 膠芽腫 / 代謝 / 核医学 / IDH |
研究実績の概要 |
膠芽腫は極めて予後不良な頭蓋内悪性腫瘍の代表格である。近年イソクエン酸脱水素酵素(以下IDH)遺伝子変異の有無により、生物学的特性や予後が大きく異なる二群に大別されることになったが、非侵襲的な術前診断方法はまだ確立されたものがない。本研究では、IDH遺伝子変異がもたらす生物学的違い、特に代謝の差異に着目し、膠芽腫の個別化治療の決定を可能とする放射性核種を利用したイメージング方法の確立を目指す。
当該年度においては、まずすでに樹立済みの膠芽腫細胞株であるU251に対して安定的に変異型IDHを導入した株を用いて、14C-酢酸の取り込み量の変化を比較し、IDH変異型細胞株ではトレーサーの集積が増加することが確認できた。次にすでに作成済みの変異型IDHの発現ベクターを用いて、異なる細胞株としてHeLaでも安定細胞株を樹立し、上述のU251と同様の実験を行い、取り込み変化が脳腫瘍以外のがん細胞でも再現可能な、一般的な事実であることも確認できた。 次に免疫不全マウス(bulb/c nu/nu)に対してそれら樹立した細胞株を用いて腫瘍モデルマウスを作成し、in vivo においてもIDH変異型細胞由来腫瘍と野生型細胞由来腫瘍との間に14C-酢酸の取り込み差があることが確認できた。摘出腫瘍切片を作成してオートラジオグラフィ測定によりIDH変異型細胞由来腫瘍での集積の増加が確認でき、かつ腫瘍内での14C-酢酸の分布が腫瘍細胞と同等に比較的均一に分布していることがHE染色と対比して確認できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初の計画では、二年度目に行うことになると判断していた、in vivo の実験でも、一貫した結果をすでに一年度目に確認することができた。これは、U251が可移植性が高く、約14日で十分なサイズに生着したため、実験のペースを上げることができた。 また、これまでのデータについて、すでに論文として投稿し、Journal of Neurooncology誌からすでに出版に至っており、当初の計画から考えると予想以上の進展である。
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今後の研究の推進方策 |
IDH変異型細胞株に集積したトレーサーがどういった化合物で存在するかを確認するため、摘出腫瘍よりホモジネートを作成し、2-HGその他の関連する代謝物を薄層クロマトグラフィー(TLC)法やRadio-HPLC等で分離し、放射性同位元素が2-HGとして細胞内に蓄積していることを確認する。
また、よりヒト腫瘍に近い腫瘍生物学的環境を用いた評価を行うため、患者由来細胞(IDH野生型、変異型両方)における14C-酢酸の取り込み量をin vitro および移植腫瘍(PDX)を用いたin vivo の系で評価し、変異の有無と集積量の関係性を調べる。
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次年度使用額が生じた理由 |
当該年度において、マウスの実験が予想以上に迅速に進行したため、通常論文への投稿の際に律速段階になることの多いそちらを優先的に行ったところ、予想以上の計画で研究を進行させることができた。本年度、集積したトレーサーの化合物同定の実験に使用予定である。
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