研究課題
膠芽腫は極めて予後不良な頭蓋内悪性腫瘍の代表格である。近年イソクエン酸脱水素酵素(以下IDH)遺伝子変異の有無により、生物学的特性や予後が大きく異なる二群に大別されることになったが、非侵襲的な術前診断方法はまだ確立されたものがない。本研究では、IDH遺伝子変異がもたらす生物学的違い、特に代謝の差異に着目し、膠芽腫の個別化治療の決定を可能とする放射性核種を利用したイメージング方法の確立を目指す。樹立済みの膠芽腫細胞株であるU251と、新たに樹立した子宮頸がん細胞株のHeLaに対して安定的に変異型IDHを導入した株を用いて、14C-酢酸の取り込み量の変化を比較し、IDH変異型細胞株ではトレーサーの集積が増加することが確認できていたが、その集積が仮説の2-ヒドロキシグルタル酸として蓄積しているかどうかが未知な結果であった。酢酸代謝には脂肪酸合成経路も存在するため、もしも仮説通りに2-ヒドロキシグルタル酸として貯留しているのであれば、14Cのradioactivity は水相に存在すると仮説をたてた。そこで、U251 IDH WildおよびIDH R132H に14C-Acetateを取り込ませた後細胞を抽出し、14C-Acetateや2-ヒドロキシグルタル酸などが含まれることが予想される水相画分の放射能測定を行ったところ、IDH R132H では取り込みの上昇がみられる結果であった。2-ヒドロキシグルタル酸その他の関連する代謝物を薄層クロマトグラフィー(TLC)法で評価していくための系の作成中であるが、引き続き評価を行っていく。
2: おおむね順調に進展している
これまで変異型IDH導入細胞での酢酸の取り込みの上昇が確認され、biodistribution やオートラジオグラフィ―での確認が終了し、またその増強した集積が水溶性化合物であることまでは確認できたため。
変異型IDH導入細胞での14C-酢酸の取り込みの上昇その集積が仮説の2-ヒドロキシグルタル酸として蓄積しているかどうかを引き続き薄層クロマトグラフィー(TLC)法で評価していくための系を確立させ評価を行っていく。また、もしもTLCでの14Cが存在する化合物の同定が困難であった場合は、別の方法として近年注目されている超偏極MRIを利用する手段を検討する。具体的には別の同位元素である13C酢酸を超偏極して、すでに確立したモデルに対して投与する。超偏極MRIにおいては、13Cの化合物の推定が可能であるのでより直接的に2-ヒドロキシグルタル酸としてのトレーサーの同定が可能と予想される。
前年度分の次年度使用額があることと、新型コロナウイルス感染症にかかわる病院職員の行動規定として、病院外の研究施設の使用が行えなかったことにある。本年度、引き続き集積したトレーサーの化合物同定の実験や、本研究でテーマとする「膠芽腫の代謝変化の画像化」の両輪ともいえる、超偏極での13C MRIの導入検討などに使用予定である。
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