研究課題/領域番号 |
19K17169
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
モハメド モハメド 神戸大学, 医学研究科, 学術研究員 (00833378)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 頭頸部がん / PDXマウス |
研究実績の概要 |
本研究では、頭頸部がん症例からの腫瘍組織を採取し、放射線感受性と、ヒトがん免疫応答を再現できる新規動物実験モデルを開発し、がん幹細胞や、その他の免疫応答に関連する新たな腫瘍抗原の探索など新規の放射線免疫療法の開発に取り組む。このモデルは、患者個別の放射線感受性、ヒトがん免疫応答の研究のみならず、放射線療法と免疫チェックポイント阻害薬の併用療法の前臨床試験などトランスレーショナルリサーチを実行可能にするものである。免疫チェックポイント阻害剤は腫瘍組織の免疫染色によるPD-L1発現が効果予測因子として用いられるが、放射線治療により組織のPD-L1発現は変化することが知られているが、放射線抵抗性の原因とされるがん幹細胞とPD-L1やその他の腫瘍抗原との関連に関しては不明な事も多く、その解明が新たな免疫放射線治療を提案する活路を開けることができる。がんの前臨床試験やトランスレーショナルリサーチに使用する動物実験モデルとして、患者のがん組織を超免疫不全マウ(NOD/SID/IL2rgKOマウス:NSGマウス)に直接移植して継代培養する「患者由来がん異種移植マウスモデル(Patient-Derived Xenograft(PDX) mouse model)」が、広く活用されている。我々の 研究室でも、乳がんや大腸がん等の様々ながん種によるPDXモデルを精力的に作製してきたが、現在その再現性を確認中である。大腸癌では再現性よくPDXマウスの作成マウスが継代出来ているが、乳がんでは再現性が得られないために確認実験を数回繰り返している。どのような因子が関与してPDXモデルを困難にしているかを回目得することは今後の研究計画の遂行に不可欠なステップであるために、解明に取り組んでいる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
PDXマウスの腫瘍発育の不安定が解決できていないため、頭頸部癌モデルへの移行が完了していない。乳がんや大腸がん等の様々ながん種によるPDXモデルを精力的に作製してきたが、現在その再現性を確認中である。大腸癌では再現性よくPDXマウスの作成マウスが継代出来ているが、乳がんでは再現性が得られないために確認実験を数回繰り返している。どのような因子が関与してPDXモデルを困難にしているかを回目得することは今後の研究計画の遂行に不可欠なステップであるために、解明に取り組んでいる。今後は、頭頸部がんPDXモデルの作成: 神戸大学倫理委員会の承認を得たプロトコールに基づき、がん手術検体を採取する。がん検体はコラゲナーゼにて処理した後、マトリゲルを加えてペーストを作成し、NSG マウスに皮下移植してPDXモデルとする。移植後に増大した腫瘍は、研究室にて摘出し、P1(継代番号1)として液体窒素に保存、もしくは新たにNSGマウスに再移植し(P2)、継代する。その上で、PDXモデルからの頭頸部がん患者のがん幹細胞分離:PDXモデルで腫瘍が2cm大に増殖した時点で腫瘍を摘出し、トリプシンで細胞を分離した上で、セルソーターを用いてがん幹細胞を分離する。初回の分離には既報告のあるCD44v3とALDH1の表面マーカーを用いて双方の高発現分画をがん幹細胞がリッチに含まれる分画として分離培養する。さらにヒアルロン酸の添加によりがん幹細胞の増殖を促進させる。マウスの免疫ヒト化を行うには、頭頸部がんの手術検体を採取する患者から、末梢血単核球を採取し、PDXモデル作製後にマウスに輸注することと考えた。同一患者より採取された単核球内の T 細胞は患者本人の胸腺で教育されているため、PDXで増殖する腫瘍とMHC拘束性を示すことが期待される。
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今後の研究の推進方策 |
今後は以下の手順での研究遂行を目指している。 (1) 同一患者の末梢血単核球の保存: 術前に同一患者より末梢血を採取し、単核球分離後に液体窒素にて保存する。この単核球を移植したPDXモデルに尾静脈より注入することにより、同一の患者由来の免疫提示細胞として腫瘍免疫の獲得をPDXモデル内で作成する。 (2) 頭頸部がんPDXモデルに対する放射線照射の効果と腫瘍内免疫細胞の解析:ステージIVの頭頸部がんの治療前の原発腫瘍から腫瘍組織を採取しPDXモデルを作成し、平衡して患者には標準的な化学放射線療法(CDDP単剤:80-100mg/m2 ; IMRT は69.96Gy/33 Fr)を行う。臨床での治療効果がCRであった高感受性群と、治療効果がSD-PDであった低感受性群のPDXモデルマウスをそれぞれ5-10匹抽出し、発育した腫瘍を摘出する。腫瘍組織の一部を免疫染色のためにパラフィンブロックを作製し、残り の腫瘍組織からは腫瘍感作されたT細胞を分離し、その分画や特徴を解析する。①腫瘍特異的T細胞エクソソーム単離法、②T細胞の培養法、③T細胞からのエクソソーム単離法、④腫瘍特異的T細胞の標的細胞への障害評価試験に関しては既に予備実験でその手法に関しては確立できている。また、脾臓からもT細胞を分離し、腫瘍内のT細胞と脾臓のT細胞との分画を比較する。 (3)4)PDXモデルからの頭頸部がん患者のがん幹細胞分離:PDXモデルで腫瘍が2cm大に増殖した時点で腫瘍を摘出し、トリプシンで細胞を分離した上で、セルソーターを用いてがん幹細胞を分離する。初回の分離には既報告のあるCD44v3とALDH1の表面マーカーを用いて双方の高発現分画をがん幹細胞がリッチに含まれる分画として分離培養する。さらにヒアルロン酸の添加によりがん幹細胞の増殖を促進させる
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次年度使用額が生じた理由 |
消耗品の一部がより低価格になったため、4000円の残余金が生じた。
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