研究課題/領域番号 |
19K17172
|
研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
脇山 浩明 九州大学, 大学病院, 助教 (70758375)
|
研究期間 (年度) |
2021-11-01 – 2024-03-31
|
キーワード | 放射線治療 / 増感剤 / ROS / ドラッグリポジショニング / 食道癌 |
研究実績の概要 |
食道扁平上皮癌への化学放射線療法は標準治療の一つであるが、放射線抵抗性の改善が喫緊の課題である。放射線による抗腫瘍効果は活性酸素産生によるものが主であるが、 癌幹細胞はROSを抑制することで放射線抵抗性を示す。これまで、申請者は食道扁平上皮癌細胞株に対して、ROSを抑制する薬剤であるスルファサラジン投与下に、放射線を照射することで、相乗効果が出現することを明らかにした。本研究ではスルファサラジンに代わる新たな放射線増感剤を、既存薬剤中より化学構造の類似性や、遺伝子発現プロファイルを用いて探索し、ドラッグリポジショニングを行うことが目的である。 2022年度はまずパブリックデータベースを用いた候補薬剤の選定を行った。Connevtivity Map(CMAP)より取得した既存薬に対する薬物応答遺伝子発現データを用いて、スルファサラジン投与/非投与のデータがあるPC3(ヒト前立腺癌細胞株)およびMCF7(ヒト乳癌細胞株)においてスルファサラジン投与下でのグルタチオン産生に関わる遺伝子の発現変動を調べたところ、PC3でスルファサラジン投与によりグルタチオン産生に関わる遺伝子群の発現の低下が認められた。 次いで、CMAPの496薬剤の中から、PC3細胞株への投与時の遺伝子発現プロファイルを用いて、グルタチオン産生に関わる遺伝子群の発現についてスルファサラジンと類似した遺伝子発現変動をもたらす薬剤を抽出した。抽出した薬剤のうち、抗悪性腫瘍薬として使用されているものや日常臨床で使用困難なものなどは除外し、複数個の薬剤を選定した。 これらの薬剤を用いて、実際に食堂扁平上皮癌細胞株に対して、まずはin vitroでの抗腫瘍効果の有無や、グルタチオン産生の抑制の有無などを確認を予定している。有効性が確認された薬剤についてはさらにin vivoで、放射線増感効果の有無を確認する予定である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2022年は、Connectivity Mapより取得した既存薬に対する薬物応答遺伝子発現データを用いて、PC3(ヒト前立腺癌細胞株)において、スルファサラジン添加時と同様の薬物応答遺伝子プロファイリング(特にグルタチオン産生に関わる遺伝子群に着目)を呈する薬剤を抽出した。予定では、2022年度にはin vitroの実験が終了している予定であったが、2023年度現在もin vitroの実験を継続している。従って研究計画はやや遅れていると自己点検による評価をした。
|
今後の研究の推進方策 |
今後は、選定した薬剤を用いての抗腫瘍効果の有無の判定や、グルタチオンアッセイを用いたグルタチオン産生の抑制の有無の評価を行う予定である。また、選定した薬剤を併用した際の放射線感受性の変化をproliferationアッセイ、ROSアッセイ、DNA damageアッセイ等で相乗効果を判定確認する予定である。加えて、当初の予定通り、マウスを用いたin vivoの実験を行う方針である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
次年度消耗品購入のため。
|