研究実績の概要 |
本年度はコロナウィルス感染拡大防止のため、施設間移動が制限されたこともあり、主にX線による放射線照射の生物効果を明らかにするべく実験を行った。主な研究内容を以下に示す。 過去に報告があるギメラシルを用いて増感効果にフォーカスを当て研究を行った。複数の培養細胞(EMT6細胞、V79細胞、HSG細胞)を用いて、ギメラシルを濃度別(30mM, 100mM, 300mM, 1000mM, 2000mM)に投与し、X線を4Gy,8Gy照射し、複数回検討を行った。結果として実施した実験条件ではcontrol群と投与群で増感効果を明らかにすることはできず、今後、投与条件を変えて実施していく予定をしている。 またコロナウィルス感染拡大が落ち着き、施設間移動が容易に可能になった場合に備えて新たな実験系の構築を準備した。名古屋陽子線治療センターで瞬間的に大線量を照射するflash照射実験が可能になるとの連絡をうけ、大線量照射に耐えられる細胞塊spheroidを作成することにした。当施設が保有するEMT6細胞、V79細胞、HSG細胞を用いて、spheroid作成用ウェルプレート使用してspheroidを作成し、その培養条件や細胞塊の直径を確認した。 施設間移動が制限されていたため、実験に並行して間質性肺炎に合併した肺がん患者に対する陽子線治療成績を本研究につながる生物学的な考察も含めてまとめ現在投稿中である。通常であれば間質性肺炎を持つ患者に対する放射線治療は有害事象が発生するケースが多いが陽子線治療をされた場合には大きな有害事象なく安全に治療できていた。陽子線の物理的特性だけでなく生物学的な効果も関与している可能性があり興味深い結果であった。この臨床的な疑問を明らかにすべく次の実験に活かしていきたい。
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