脳微細構造を多角的に定量する次世代MRIによる多発性硬化症の新規診断法の構築

2019 年度 実施状況報告書

• 研究課題/領域番号: 19K17177
• 研究機関: 順天堂大学
• 研究代表者: 藤田 翔平 順天堂大学, 医学部, 助手 (60827244)
• 研究期間 (年度): 2019-04-01 – 2022-03-31
• キーワード: 磁気共鳴撮像法 / 多発性硬化症 / 定量MRI / in vivo imaging

研究実績の概要

多発性硬化症(MS)患者では、日常臨床で一般的に撮像される通常の脳MRIでは異常を検 出できない脳領域(normal-appearing brain tissue, NABT)の脳微細組織に障害が生じており、 運動機能や高次機能に影響する可能性が高いと考えられている。本研究では、脳微細組織を評価する最新のMRI撮像法であるneurite orientation dispersion and density imaging(NODDI)と 3D quantitative synthetic MRIで得られる複数の定量値を統合的に解析する新規アプローチを提案し、MSに特異的なNABTの障害分布・程度に関して包括的な評価を行い、MSの病態を反映した画像的特徴を解明していくことを目的としています。2019年度は、健常者および多発性硬化症患者にて順天堂大学医学部附属病院を受診するMSやNMOが疑われている患者ないし既に診断されている患者、及びMSとの鑑別が問題となる症状を呈する患者に対し、従来のMRIに 加えて、NODDIと3D quantitative synthetic MRIの撮像を行い、患者データの収集を開始した。初期検討にて多発性硬化症患者においてプラークの検出能評価を行ったところ、conventional MRIとほぼ同等の検出能を維持しつつ、撮像時間を約半分に短縮することができた。これらの結果は論文投稿中である。さらに、縦緩和時間（T1）、横緩和時間（T2）、プロトン密度（PD）、ミエリン量を含めた各種定量値のROI解析および画像統計解析を並行して行い、疾患に特徴的な障害分布や程度の探索を開始している。

現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

多発性硬化症にて3D quantitative synthetic MRIおよび定量MRIの有用性を見出し、論文投稿中の状態である。

今後の研究の推進方策

今後も拡散MRIモデルであるNODDIに加えて近年提唱された3D quantitative synthetic MRIが短時間で脳の3次元構造およびミエリン量を測定できる点に着目し、これらを統合的に 解析することによってMS患者の脳微細組織の障害をin vivoで捉え、MSの病態を反映した画像的特徴を解明する。これに基づき新たな診断指標や治療効果判定の指標を創出する。

次年度使用額が生じた理由

新型コロナウイルス感染症の発生により学会発表の機会が予定よりも減少したため。
データ集積は進んでおり、元画像および再構成データの保存ストレージおよび解析機器の購入費として使用する。

研究成果

• [雑誌論文] Synthetic MRI and MR fingerprinting in routine neuroimaging protocol: What's the next step? (2020)
  • 著者名/発表者名: Fujita Shohei、Hagiwara Akifumi、Aoki Shigeki、Abe Osamu
  • 雑誌名: Journal of Neuroradiology 巻: 47 ページ: 134～135
  • DOI: https://doi.org/10.1016/j.neurad.2020.02.001
  • 査読あり
• [雑誌論文] Deep Learning Approach for Generating MRA Images From 3D Quantitative Synthetic MRI Without Additional Scans (2020)
  • 著者名/発表者名: Fujita Shohei、Hagiwara Akifumi、Otsuka Yujiro、Hori Masaaki、Takei Naoyuki、Hwang Ken-Pin、Irie Ryusuke、Andica Christina、Kamagata Koji、Akashi Toshiaki、Kunishima Kumamaru Kanako、Suzuki Michimasa、Wada Akihiko、Abe Osamu、Aoki Shigeki
  • 雑誌名: Investigative Radiology 巻: 55 ページ: 249～256
  • DOI: DOI: 10.1097/RLI.0000000000000628
  • 査読あり / オープンアクセス
• [雑誌論文] Three-dimensional high-resolution simultaneous quantitative mapping of T the whole brain with 3D-QALAS: An accuracy and repeatability study (2019)
  • 著者名/発表者名: Shohei Fujita, Akifumi Hagiwara, Masaaki Hori, Marcel Warntjes, Koji Kamagata, Issei Fukunaga, Christina Andica, Tomoko Maekawa, Ryusuke Irie, Mariko Yoshida Takemura, Kanako Kunishima Kumamaru, Akihiko Wada, Michimasa Suzuki, Yutaka Ozaki, Osamu Abe, Shigeki Aoki
  • 雑誌名: Magnetic Resonance Imaging 巻: 63 ページ: 235-243
  • DOI: https://doi.org/10.1016/j.mri.2019.08.031
  • 査読あり / オープンアクセス / 国際共著
• [雑誌論文] 3D quantitative synthetic MRI‐derived cortical thickness and subcortical brain volumes: Scan?rescan repeatability and comparison with conventional T 1 ‐weighted images (2019)
  • 著者名/発表者名: Fujita Shohei、Hagiwara Akifumi、Hori Masaaki、Warntjes Marcel、Kamagata Koji、Fukunaga Issei、Goto Masami、Takuya Haruyama、Takasu Kohei、Andica Christina、Maekawa Tomoko、Takemura Mariko Yoshida、Irie Ryusuke、Wada Akihiko、Suzuki Michimasa、Aoki Shigeki
  • 雑誌名: Journal of Magnetic Resonance Imaging 巻: 50 ページ: 1834～1842
  • DOI: https://doi.org/10.1002/jmri.26744
  • 査読あり / オープンアクセス