研究課題/領域番号 |
19K17179
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研究機関 | 東海大学 |
研究代表者 |
山本 章太 東海大学, 医学部, 臨床助手 (20799548)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 薬剤溶出性ビーズ / 生分解性ポリマー / 慢性肺アスペルギルス症 / 喀血 |
研究実績の概要 |
in vitro study:新規DEB作製・薬剤溶出速度測定
リピオドール/ ポリカプロラクトン/ ボリコナゾールを高温環境下で撹拌すると,三者が混じり合い分散した溶融流体となる.当研究室でマイクロ流体装置を新たに作製し,溶融状態の混合流体(分散相)を高温環境の流水(連続相)によって球体に引きちぎり,低温環境下で固化した.当該のビーズは疎水性であるため,そのままでは水中でビーズ同士が凝集し血管内への注入ができない.表面をゼラチングラフトの手法で親水性に改質し良好な分散性を維持することに成功した.段階的に濃度を変えたリパーゼ溶液を用いてビーズを恒温震槽で30日間に渡って溶解させ,高速液体クロマトグラフィで薬物濃度を測定し,溶出速度の算出を行った.溶出速度測定の結果を薬剤の配合量を調整した.
また,このマイクロ流体装置では連続相と分散相の体積流量比及び粘度を制御することにより,作製したビーズの粒径を変化させることが可能である.体積流量比を 2,000 - 3,000 に設定することで,作製したビーズの粒径を300 - 500 umに調整することができた.一般的に喀血時の血管塞栓術において,適切な塞栓物質の粒径は,300 um以上とされており,この粒径は実臨床における使用に際して,適切な粒径である.大きすぎるビーズを除外して,ビーズの分散性を担保するために,動物実験に際してはさらにCalibrationを行う予定としている.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2019年度に予定していた,in vitro study:新規DEB作製・薬剤溶出速度測定は概ね終了しているため.ただし,新型コロナウイルス感染症の影響で,2020年3月から主たる研究施設の慶應義塾大学理工学部への立ち入りが禁止されているため,今後の研究計画には遅滞が生じる可能性がある.
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今後の研究の推進方策 |
新型コロナウイルス感染症の影響で,2020年3月から主たる研究施設の慶應義塾大学理工学部への立ち入りが禁止されているが,それが解除され次第,作製したビーズの抗真菌作用の確認試験に移行する.以下に具体的な推進方策を示す.
in vitro study :抗真菌作用評価 代表的な菌種であるAspergillus fumigatus(オールゲノム解析株,Dal/CEA10株)と薬剤感受性検査キットを用いて,作製したビーズの抗真菌作用を半定量的に確認する.同法は米国臨床検査標準委員会規定のM38-3rd edition に準拠した国際的な薬剤感受性検査である.12列のウェルに濃度勾配をつけた薬剤を予め配置し,100 uLの菌液投与48時間後の混濁度を倒立顕微鏡もしくはリーディングミラーによって確認する方法である.混濁度が低い透明なウェルが増えるほど薬剤の抗真菌作用が強いことを意味しており,薬剤溶出性ビーズの投与量を段階的に漸増させることで既存のボリコナゾール濃度(2 - 4 ug/mL)よりも効果的な単位体積あたりのDEB投与量を決定する.ボリコナゾール注射薬投与では,菌糸が破壊されて表面が不整となっている像が走査電子顕微鏡で確認されるのが一般的である.同様の所見が,シャーレのコロニー中に投与したビーズ周囲でも得られるか確認する.
また,この抗真菌作用評価によってビーズ投与量の決定がスムーズに行われた場合は,2021年度を待たずに兎(日本白色種,雌)を用いた動物実験に移行する予定である.
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次年度使用額が生じた理由 |
繰越金の理由 1)ビーズの作製及び薬剤溶出性の試験に際しては,元々当研究室が有していた試薬・材料で実施可能だったため.理由 2)2019年度中に予定していた研究会や学会への参加が,新型コロナウイルス感染症の影響で中止されたため.
2020年度に関しては,ゲノム株である真菌の購入・試薬の追加購入・動物実験の実施などで研究費を使用予定.
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