研究課題/領域番号 |
19K17180
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研究機関 | 東京慈恵会医科大学 |
研究代表者 |
中原 直哉 東京慈恵会医科大学, 医学部, 助教 (10632193)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | DSC / MR信号 / 水 / 筋タンパク / 骨格筋 |
研究実績の概要 |
骨格筋細胞内に0℃以外で融ける水を用いて、MR信号だけではわからない分子を束縛する相互エネルギーの大きさを明らかにすることが本研究の大きな目的である。水は“氷”の状態から“液体の水”に変化するときに融解潜熱を吸収するが、この熱をDSC法で測定し、分子を束縛する相互エネルギーの指標にする。特に骨格筋細胞内の水の中で-24℃や-21℃で融ける2種類の水に着目し、それらの水をMR信号との対応させることを目指した。 これらの水の性質を明らかにするために細胞膜を除去した骨格筋除膜筋線維を用いたDSC法で融解潜熱を測定した。骨格筋除膜筋線維では細胞膜がないため細胞内環境を溶液の調整で変えることや、主要な筋タンパクであるミオシンやアクチンを除去することが出来るため細胞内の状態を変化させて評価するのに適している。具体的には高イオン強度によりミオシンを除去でき、一方で血漿タンパク質の一種であるゲルゾリンによりアクチンの除去することが出来る。これらの手法によりアクチンとミオシンを熱変性や除去すると、それぞれ変化したタンパクに応じて-24℃や-21℃で融ける水が変化する。実際にミオシンの変性や除去では-21℃で融ける水が変わり、アクチンの変性も加えたり除去をしたりすると-21℃や-24℃で融ける水が変化する。さらにアクチンの変性や除去では温度変化を加えた時の比熱が変性前より低下することを明らかにした。 この変化が規則的なサルコメア構造によるものか、筋タンパク周囲の水由来かをより明らかにするために、細胞内を高分子により脱水させ筋タンパク周囲の水状態を変化させて測定する必要がある。その基礎データとして脱水時の筋サルコメア構造の微細構造変化を測定できるX線回折法によりミオシンフィラメントの格子間隔の測定および解析法を行った。除膜筋線維から十分に格子間隔などを評価しうる方法を確立できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
DSC法での細胞内の水分子相互作用の測定が確立してきておりミオシンやアクチンの状態による-24℃や-21℃で融ける水の融解潜熱が変化することがわかってきた。その変化がサルコメア構造によるか筋タンパク周囲の水由来かを明らかにするために細胞内を脱水した骨格筋細胞のDSC測定およびX線回折法によるサルコメア構造微細構造の変化を測定する予定であった。しかし、コロナ禍の緊急事態宣言に伴って納品の制限や、X線回折法を実施するつくばの高エネルギー加速器研究機構の閉鎖などがあり、予定よりも実施状況は遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
上記の遅れの分の試薬は準備が整ったので、濃度や分子量を変えた高分子物質であるポリエチレングリコールでのDSC測定を行い細胞内の脱水に応じて-24℃や-21℃の融解潜熱が変化するかを評価する。その結果をMR測定で既に先行研究で得られている結果との比較を行い、MR信号との対応を目指していく。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍により納品制限や外部施設の閉鎖による実施状況の変化により本年度の使用額が予定より減少した。また解析用コンピュータを計上する予定であったが在庫がない状態が続き購入が出来ずその分の使用額がなかった。次年度の実施や購入にあてるとともに研究の実施状況によっては研究期間の延長等を考慮する。
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