研究課題/領域番号 |
19K17183
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研究機関 | (財)冲中記念成人病研究所 |
研究代表者 |
川内 覚 (財)冲中記念成人病研究所, その他部局等, 研究員 (50808376)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | コーンビームCT / 脳血管内治療 / 水晶体防護 / IVR / ビスマス |
研究実績の概要 |
国際放射線防護委員会が2011年に水晶体の閾値線量を5Gyから0.5Gyに引き下げる声明を発表し、本邦では2020年4月より医療法に医療放射線に係る安全管理項目 を新たに規定した。医療被ばく、特に水晶体被ばく線量の低減に関しては高い注目が集まっている。脳血管内治療は、診断目的の脳血管撮影と比較し て患者被ばく線量の増大が懸念され、治療後の放射線白内障の発生が危惧されている。血管撮影装置のアプリケーションの1つであるコーンビームCTは、1回の手 技中に頻回に撮影を行うため患者の被ばく線量の増大要因として懸念されている。適切な水晶体防護措置を講じる必要があるが、これまでコーンビームCT撮影に 特化した水晶体防護具が存在していないのが実情であった。本研究では、コーンビームCT撮影時の水晶体線量の低減を目的とした水晶体防護具の開発を行ってい る。
2019年度は、水晶体防護具に用いる素材の検討を行い、水晶体線量低減率とコーンビームCT画像の画質を評価した結果、ビスマスと鉛防護眼鏡が、防護具として適していることが明らかとなった。
2020年度は、ビスマスの配置条件(配置距離、配置位置、厚さ)を変更させて、コーンビームCT画像の画質が向上するか否か検討を行った。その結果、配置距離はファントム表面から10mm、配置位置は眼球の位置に対して外側寄り、厚さは1枚とすることで、従来の配置条件と比べ、コーンビームCT画像の画質が向上することが明らかとなった。 今後は、水晶体線量低減率に関しても検証を行い、最適な防護具の配置条件を決定していく予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2020年度は、コーンビームCT撮影に用いる防護具の改良として、防護具の配置条件の検証を行った。最適な条件を決定することにより、コーンビームCT画像のアーチファクトが軽減して、画質が向上することを明らかとすることができた。 当初は、水晶体線量の測定を行い、線量低減率の評価を行う予定であったが、新型コロナウィルスの影響で装置を用いた線量測定の実験の遂行が困難であったため、2021年度に継続して行う予定である。 研究成果については、論文化を行いEuropean Journal of Medical Physics誌に掲載を行うことができた。
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今後の研究の推進方策 |
2020年度に決定した防護具の配置条件下において、頭部ファントムを用いて水晶体線量の測定を行い、水晶体線量低減率を算出して、防護具の遮蔽効果を評価する予定である。 また現在は、防護具の被写体の装着は、距離の測定等を手作業で行っているため、作業自体に手間が掛かっている。今後の臨床応用に向けて、被写体への着脱が容易となる装具等の開発についても、検討を進めていきたいと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウィルスの影響で、発表や参加を予定していた、国内・国際学会が中止や延期になったため。
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