国際放射線防護委員会が水晶体の閾値線量を5Gyから0.5Gyに引き下げる声明を発表し、本邦では2020年4月より医療法に医療放射線に係る安全管理項目が新たに規定された。医療被ばく、特に水晶体被ばく線量の低減に関しては高い注目が集まっている。脳血管内治療は、患者被ばく線量の増大が懸念され、治療後の放射線白内障の発生が危惧されている。血管撮影装置のアプリケーションの1つであるコーンビームCTは、1回の手技中に頻回に撮影を行うため患者の被ばく線量の増大要因として懸念されている。適切な水晶体防護措置を講じる必要があるが、これまでコーンビームCT撮影に特化した水晶体防護具が存在していないのが実情であった。本研究では、コーンビームCT撮影時の水晶体線量の低減を目的とした水晶体防護具の開発を行った。 2019年度は、水晶体防護具に用いる素材の検討を行い、水晶体線量低減率とコーンビームCT画像の画質を評価した。その結果、ビスマスと鉛防護眼鏡が、防護具として適していることが明らかとなった。 2020年度は、ビスマスの配置条件(配置距離、配置位置、厚さ)を変更させて、コーンビームCT画像の画質が向上するか否か検討を行った。その結果、配置距離 はファントム表面から10mm、配置位置は眼球の位置に対して外側寄り、厚さは1枚とすることで、従来の配置条件と比べ、コーンビームCT画像の画質が向上することが明らかとなった。 2021年度は、前年度までに決定したビスマスの配置条件下での水晶体線量低減率について検証を行った。最適化したビスマスの配置条件下での水晶体線量低減率は、右水晶体において26.4±0.39%、左水晶体において27.4±0.40%であった。 本研究を通じてコーンビームCT撮影に用いる、水晶体防護のための防護具の素材の選定と配置条件の最適化行い、水晶体防護具の開発を行うことができた。
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