研究課題/領域番号 |
19K17187
|
研究機関 | 国立研究開発法人国立長寿医療研究センター |
研究代表者 |
小縣 綾 国立研究開発法人国立長寿医療研究センター, 認知症先進医療開発センター, 研究員 (10805857)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
キーワード | TLR4 / PETイメージング / 短寿命放射性核種 |
研究実績の概要 |
新規神経炎症リガンドの臨床応用を目指し、脳内においてミクログリアやアストロサイトに発現し、炎症において重要な因子のひとつであるTLR4を標的とする18F標識PETリガンドを開発し、小動物においてその有効性を明らかにする。 TLRはパターン認識受容体であり、TLR4は脳内では主にミクログリアやアストロサイト細胞膜表面に発現し、LPSなどが結合することで活性化され、TNF-αやIL-6、IL-1βなどの炎症性サイトカインを産生し、炎症反応を惹起する。実験的には加齢マウスにおいて、ミクログリア細胞膜上のTLR4にリガンドが結合すると、ミクログリアが活性化されてアミロイドβが減少することが報告されている。加えて、アルツハイマー病患者においてもTLR4の脳内発現量は増えている。これらの報告から、TLR4を標的とするPETリガンドは、TLR4の脳内密度や分布などの情報が得られるバイオマーカーとなりえれば、神経変性疾患における治療法の開発に役立つことが期待される。 本研究では、脳梗塞モデルマウスにおいて脳内移行性及び薬効が報告されており、TLR4を標的とするDNAアプタマーを使用する。しかし、このDNAアプタマーは血液脳関門が破壊されていない状態における脳内移行性が明確には示されていない。そのため、蛍光標識DNAアプタマーを健常マウスに投与し脳内移行性を検証した後に、18F標識化及び小動物における有効性評価を実施する。DNAアプタマーが脳内移行性を示さなかった場合は、脳内移行性が示されているTATなどのペプチド分子を結合させたペプチド/DNAアプタマーを合成し、脳内移行性の向上のため構造最適化を実施する。その後、最適化した構造を18F標識化し、小動物においてTLR4のイメージングリガンドとしての有効性評価を実施する。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、脳梗塞モデルマウスにおいて脳内移行性及び薬効が報告されており、TLR4を標的とするDNAアプタマーを使用する。健常マウスでの脳内移行性を検証するため、蛍光標識DNAアプタマーを尾静脈投与し、脳内へのDNAアプタマーの移行をHPLC分析及びSDS-PAGEで確認した。その結果、脳内に蛍光標識DNAの存在を確認することができた。 また、18F標識体の前駆体合成は、より簡便にin vitro/vivo評価を実施するために11C標識体も合成できるような標識前駆体に構造を変更した。前駆体合成は完了したため、今後標識化合成の条件検討を実施する。
|
今後の研究の推進方策 |
今後、18F及び11C標識体の標識化合成の条件検討を実施する。標識化合成を実施する施設の都合で、11C標識体の合成を先行して実施する予定である。 また、本研究で使用しているDNAアプタマーは蛍光標識体で脳内移行性を確認することができたが、その高い熱的安定性のためHPLC及びSDS-PAGEでの鎖長の確認を含めた分析条件の決定が困難である。TLR4はその阻害剤としてペプチド分子の報告もあるため、分析の容易さから11C標識ペプチドによるイメージングも検討に入れる。
|
次年度使用額が生じた理由 |
動物評価まで実施することができなかったため、また、学会参加の見送り等により次年度使用額が発生した。今年度、11C及び18F標識化合成やそれに伴う動物評価を意欲的に実施するため、その合成や実験動物の費用として使用する。
|