研究課題
筋ジストロフィーと診断された患者とその保因者である母親を対象に、心筋障害の定量法として新しく開発された心臓MRIのT1 mapping法をMRI用造影剤の投与前後で実施することで細胞外容積分画(ECV)を算出し、筋ジストロフィーによるびまん性心筋障害の検出を試みた。筋ジストロフィー患者6名とDuchenne型/Becker型筋ジストロフィーの推定保因者5名を前向きに登録し、T1 mappingを含む心臓MRIを実施した。患者6名はいずれも男性で、年齢の中央値は16.0歳、内訳はDuchenne型筋ジストロフィーが2名、Becker型筋ジストロフィーが3名、筋強直性ジストロフィーが1名であった。推定保因者5名の年齢の中央値は46.0歳であった。左室駆出率は4名の患者と1名の推定保因者で55%未満に低下しており、心筋障害評価のゴールドスタンダードとされる遅延造影MRIでは4名の患者と2名の推定保因者に異常増強像を認めた。一方、左室全体のECVは患者群で34.8%(範囲:27.6%~43.8%)、推定保因者群で37.4%(範囲:36.1%~39.8%)であり、5名の患者と全ての推定保因者で過去に報告されたECVの正常上限値(30.4%)より上昇していた。本研究より、びまん性心筋障害を反映したECV上昇は進行性筋ジストロフィーの患者および推定保因者の両方にみられることが明らかになった。筋ジストロフィーでは、遅延造影MRIで異常増強像がなくともびまん性心筋障害によりECVが上昇している症例もあり、ECVは遅延造影MRIよりも正確に心筋障害を反映した指標である可能性がある。今後は造影剤を用いないMRI撮像法による心筋障害の検出能についても明らかにしていく予定である。
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