本研究では、病態個体差の大きい精神神経疾患に対する薬物療法最適化が緊急課題であると位置づけ、薬物代謝酵素活性イメージングのモデルケースとして、多くの抗うつ薬や抗精神病薬の代謝に共通して関与するcytochrome P450 (CYP) 2D6活性画像診断薬の開発を推進した。 放射性ヨウ素標識メキタジン (125I-IMQ) が、CYP2D6によって特異的に代謝され、生成された放射性代謝物が選択的に胆汁排泄されることを確認した。さらに、肝臓、胆嚢及び腸管をターゲットとした125I-IMQのダイナミックSPECTイメージングで関心領域を設定し集積を評価することが可能であり、胆嚢及び腸管への集積が経時的に増加することがSPECT画像から確認できた。また、臨床への応用を目指し、PET核種である18F標識メキタジン(18F-FMMQ) で同様の検討を行った結果、125I-IMQと同様にCYP2D6特異的に代謝を受け、生じた放射性代謝物が優先的に胆汁排泄され、18F-FMMQを用いたPETダイナミックイメージングによる胆嚢の経時的集積曲線でも、患者個々の包括的な薬物代謝酵素 CYP2D6活性をリアルタイムに反映した定量評価できる可能性が示された。 さらに、CYP2D6活性画像診断薬開発の手技を他のCYP活性診断へ応用し、CYP2D6及びCYP3A4が代謝に強く関与する放射性ヨウ素標識O-desmethylvenlafaxine (125I-ODV) を新たに開発した。125I-IMQと同様に胆汁排泄され、CYP2D6及びCYP3A4を阻害することで胆汁排泄量が減少することから、放射性ヨウ素標識ODV静脈投与後のSPECTイメージングによって胆汁排泄動態を解析することで、患者個々の薬物代謝酵素CYP2D6、CYP3A4活性を包括して定量評価できる可能性を示し、論文として報告した。
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