門脈塞栓術は切除予定区域の門脈をあらかじめ塞栓することで、残存肝容量を増大させる手技である。安全に大量肝切除術を行うためには、残存予定肝を十分肥大させておく必要がある。しかし、どのような塞栓方法が最も効果的に残存予定肝を肥大させることができるかは、未だ明らかになっていない。さらに、十分な残存肝肥大効果を早期に予見できるバイオマーカーがあれば、追加塞栓の適応決定や肝切除時期の決定において大変有用である。本研究の目的は、適切な門脈塞栓術の方法を確立し、残肝肥大率を早期に予測できるバイオマーカーを探索することである。 ラットに全身麻酔を行ったのちに、小開腹して腸間膜静脈を直接穿刺し、カテーテル先端を標的門脈枝に留置した。その後、X線透視下に塞栓物質(無水エタノールまたはn-butyl-2-cyanoacrylate:NBCA)を注入して、45%門脈塞栓モデルを作成した。術後2週間後にラットを安楽死させ、肝臓を摘出し、重量を計測することにより、非塞栓領域の肝肥大率と塞栓領域の肝萎縮率を算出した。無水エタノール群と比較して、NBCA郡のほうが、より非塞栓領域の肝肥大と塞栓領域の肝萎縮を認めた。また、エタノール群とNBCA群の血管内皮障害を比較すると、エタノール群では500μm以下の血管内皮障害が強かったが、壊死には寄与しないことが示唆された。取得した非塞栓領域組織サンプルより、残肝肥大率を早期に予測できるmicroRNAバイオマーカーを探索したが、発見には至らなかった。
|