研究実績の概要 |
本研究は、CT ナビゲーションUSにより深い穿刺でも針先が静脈内にとどまる安全な穿刺ライン・穿刺可能な深さを検証することを目的とした。また、複数穿刺例の原因解析を行うことで、安全な穿刺ライン確保が難しい症例の早期見極め、代替方法への移行すべき患者の早期発見を目的とした。 【安全な穿刺ラインの探索】部位別の穿刺可能距離や穿刺深度、血管貫通に必要なストローク長などを解析した。穿刺可能距離は、鎖骨上アプローチでの内頚静脈/鎖骨下静脈合流部穿刺が、腕頭静脈側に水平に針が刺入するため最も長く(平均25.4mm)、他の内頚短軸法/長軸法、鎖骨下アプローチによる鎖骨下静脈穿刺と比較しても有意に長かった(p<0.01)。また穿刺成功に必要な針のストローク長は平均13.9mmで、合流部の穿刺可能距離はこの長さ含み血管後壁へ接触することなく穿刺することが可能である。内頚静脈穿刺の76.5%は後壁に穿刺針が接触していたのに対し、合流部穿刺では2.7%の接触に留まっており、以上からも合流部穿刺は安全であることが示唆された。 【複数穿刺となった症例の原因調査】関連要因をロジスティク回帰分析で解析。術者経験年数、内頚静脈血管径、血管内挿入の針の長さなどが統計学的に関連を示したが(各 p=0.046, 0.048, 0.018)。血管内挿入の針の長さの関連に関しては、複数穿刺には穿刺後のneedle driftのようなガイドワイヤ挿入時の針先逸脱も含まれるためと思われる。 一方で、BMIや穿刺部位の違いによる関連は見られなかった。 CTデータの併用は、より客観的な穿刺ルートの確認や穿刺対象周囲の動脈の存在の意識付け、胸膜高エコーといった穿刺メルクマールの認識など、CV穿刺に触れ始めた初学者への補助ツールとしては、とくに有用である。一方で、位置合わせの正確性や煩雑さにはまだまだ、改善の余地があり今後の課題である。
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