研究課題/領域番号 |
19K17206
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研究機関 | 奈良県立医科大学 |
研究代表者 |
三浦 幸子 奈良県立医科大学, 医学部, 講師 (60597095)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 陽子線 / 放射化画像 |
研究実績の概要 |
当大学の関連施設である陽子線治療センター内に併設されている、当大学の「陽子線がん治療研究センター」は、容易に陽子線照射実験や放射化画像撮影を行うことが可能である。同施設で、培養細胞や有機物に対して陽子線照射を開始し、放射化画像を撮像、それを基にして陽子線のRBE測定を試みた実験結果も有しているため、引き続き継続を行った。 肺癌に対する陽子線治療における照射線量・線量分布、生物学的効果比(relative biological effectiveness;RBE)と肺の間質性変化・放射線肺臓炎との関連について調べるため、まずは容積測定アクリルファントムを複数作成し、陽子線を照射し、その後の放射化画像を取得、得られた画像から照射線量や線量分布との比較、並びにRBE算出などを行った。 具体的には、容積測定アクリルファントム内に数種類の物質(精製寒天(微生物培養用)のみ、またはコルクを埋没させた精製寒天、組織片を埋没させた精製寒天など)を入れ、まずは同一条件で陽子線を照射し、待機時間10分の後に、収集時間20分でPET/CTを撮影することによって放射化画像を取得した。各々の物質における線量分布を画像化し、定性的、および相対比較による半定量化を行い解析中である。 肺野を模倣したコルク部では陽子線の透過性が高く、治療計画と比較して深部への線量増加が認められた。一方、精製寒天ではほぼ治療計画通りの均一な分布が得られ、組織片では組織性状によって異なった不均一な分布を示した。上記のことから肺内という空気の多い組織内での陽子線の動向やストッピングパワーについても検討を行い、腫瘍および周囲正常組織に与える影響についての検討を進めている。 臨床面では、当大学内に設置されている陽子線治療用の計画装置を用いて、肺癌症例の治療計画を作成、線量分布の確認などを行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
内容物の異なった容積測定アクリルファントムを複数作成し、陽子線を照射し、その後の放射化画像を取得、得られた画像からファントムの内容物質による照射線量や線量分布の違いを比較検討し、RBE算出などを試みている。 培養細胞に対する陽子線照射、放射化画像の撮像、細胞生残率からのRBE算出を行ったが、これらのデータ解析と相関についての検討は現在進行中である。 臨床例については陽子線治療用の計画装置を用いて、肺癌症例の治療計画を作成、線量分布の確認を行っており、基礎実験結果を合わせて、倫理委員会の承認後に臨床例の検討を開始する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き、容積測定アクリルファントムに対する陽子線照射を、異なる環境下で行い、その後の放射化画像を取得、得られた画像から異なる環境下での違いなどについて検討を行う予定で、次年度は、PET画像におけるSUVの対比から、半定量的な解析を行って、RBEの算出を行う計画である。 臨床例については、倫理委員会の承認後に、肺癌患者に施行した陽子線治療後のPET/CTによる放射化画像を取得し、それを基にしたRBEの推定と、実際の線量分布の把握を行い、治療後に生じた実際の放射線肺臓炎と対比し、また治療前後でCT perfusionを用いて照射に伴う肺血流や腫瘍血流の変化、腫瘍内の組成変化などを捉え、放射化画像を用いた解析と併せて、放射線肺臓炎の予測や重症度評価との相関を検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度は、寒天、他数種類を含む人体模型を作成して、これに陽子線を照射し、さらにそのPET画像を撮影して、得られたデータの定性的な解析を主体に研究を行った。大学にはデータ解析、画像解析用のパソコンを購入し、研究センターにも必要備品を購入して研究に使用し、上記のような定性的解析を主体に行ってきたので、画像解析用モニタは大学設置のモニタで代用したが、今後は当初の計画どおり、定量的解析、特にCT画像、PET画像におけるCT値、CT perfusion、SUV等を含めた定量的な研究を行う予定であり、これに合わせて、研究センターにも画像解析用モニタを購入予定である。同様に、次年度以降の定量的な解析に合わせて、統計解析ソフトウェアの購入なども予定している。 また、データ集積や解析については、本年度は主に自身と同施設の研究協力者で行っており、研究補助に対する謝礼金が発生しなかったが、次年度の定量的研究では、研究補助に対する謝金も必要になる。 今後はこれらの費用も必要となるため、次年度使用額と翌年度分助成金と合わせて適切に使用する予定である。
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