研究実績の概要 |
本研究の目的は放射線治療を実施した患者データを用い、高い精度で予後予測を可能とする深層学習モデルを開発することである。 本年度は、The Cancer Image Archive(TCIA)から取得した非小細胞肺癌患者のデータ(NSCLC-Radiomics)を使用し、1,2,3,5年時点における生存の有無を予測する深層学習モデルを開発した。モデル開発の前準備として、入力データであるCT画像データを任意の解像度に補間した後、任意のサイズのパッチを抽出することが出来るプログラムを作成した。このプログラムはデータ水増しを行えるように抽出するパッチの位置も任意で決定出来るように作成した。その後、畳み込み層、バッチ正則化層、ReLu層、プーリング層、全結合を連ねた3次元畳み込みニューラルネットワークアーキテクチャを構築し、前準備で用意したデータセットを使用しモデルの学習を行った。また、NSCLC-RadiomicsデータにはCT画像データの他、年齢や癌のステージ、病理型などの臨床データも含まれていることから、精度の向上を目指し多入力学習モデルとマルチタスク学習モデルの開発を行った。多入力モデルでは画像データに加え、臨床データを入力データとして学習が出来るように、マルチタスクモデルでは生存の有無に加え、病理型とステージを同時に予測出来るようにアーキテクチャを作成し学習を行い、精度の検証を行った。 また、予測精度の更なる向上を目的として、腫瘍の形態的情報が得られるCT画像だけでなく、機能的情報が得られるPET画像も同時に深層学習に適用することを検討した。この実験では、TCIAから取得した頭頚部癌患者のデータ(HNSCC)に含まれる治療前CT画像とPET画像を入力データとして使用し、治療後の遠隔転移の有無を予測するマルチモーダルモデルを開発し、CT画像のみを使用したモデル、PET画像のみを使用したモデルと比較することで予測の精度が向上するかを検証した。
|