昨年度に引き続き「OAIコホート中の早期膝OA群における半月板逸脱幅(MME)の変化と骨棘サイズの変化の関連性検討のための縦断研究」について取り組んだ。MMEと骨棘の測定に用いたintermediate-weighted imageは濃度分解能が高い画像であるため通常のGray画像では画素値の差が小さい構造物は境界が不明瞭に見えるため、疑似カラー画像化した。疑似カラー画像は画素値の差が小さい構造物は同系色の濃淡で表示し、画素値の差が大きい構造物は異なる色で表示する。MMEと骨棘幅は密接に関連するが、その過程のより詳細な解析を行った。MMEと関連する病態として、骨棘形成過程初期の変化としての脛骨周囲の骨膜/滑膜の石灰化に着目した。MME周囲を観察すると、半月板と内側側副靭帯(MCL)間および冠状靱帯に沿って半月板下部の脛骨とMCL間に石灰化を認めた。冠状靱帯周囲の骨膜/滑膜は石灰化し積層化することで肥厚するため脛骨とMCL間にスペースを作っていた。経年変化から石灰化は段階的に変化し、石灰沈着物を含む半液状、軟骨様、硬化の段階的変化が見られ、半月板断裂があると急速に拡大していた。実際、脛骨延長線上の石灰化は骨棘の軟骨部に、冠状靱帯脛骨付着部付近の骨棘は拡大しリモデリングされている可能性が予測された。文献によると肩の石灰沈着性腱炎で軟骨細胞に分化することができる腱幹細胞の存在や膝MCLの石灰化の発生はまれでなく同様のメカニズムで石灰化が起こることが報告されている。統計解析によりMCLおよび冠状靱帯の肥厚を伴う石灰化はMMEと骨棘の両方に関連し、骨棘発生過程早期の解析を進めることで、骨棘拡大がMMEを拡大させることがより一層示唆された。骨棘形成過程初期の変化としての石灰化は、半月板をMCLに固着させていることで可動性が低下するため、半月板断裂や炎症を招く可能性が示唆された。
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