研究課題/領域番号 |
19K17211
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研究機関 | 愛知学院大学 |
研究代表者 |
木村 将士 愛知学院大学, 歯学部, 歯学部研究員 (80619164)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 口腔癌 / PET / 腫瘍内 / 不均一 / テクスチャ解析 / Radiomics / 画像診断 |
研究実績の概要 |
口腔癌診療におけるFDG-PET/CT(PET)検査は、近年、頚部リンパ節転移や遠隔転移の診断だけでなく原発腫瘍の評価においてもその有用性が示されている。本研究の目的は口腔癌患者のPET検査画像を解析することにより、予後評価やリンパ節転移診断に有用な新たなPET指標を確立することである。申請者は特に腫瘍内での放射線性薬剤(FDG)の不均一な集積に着目し、解析を行ってきた。不均一性を定量的に評価する指標として最初に着目したのは不均一指数 (Heterogeneity index; HI)および不均一因子(Heterogeneity factor; HF)であり、これらはいずれも簡便な定義式により算出可能な集積指標であり、予後との関連が示されれば早期に臨床応用可能である。申請者は初年度の実績として62例の口腔扁平上皮癌一次症例を対象にHIおよびHFを算出し、予後との関連について評価を行った。結果として全生存率(OS)を対象とした解析において、高いHI値を示す症例は予後不良であることを明らかにした。また本年度からは新たな不均一性の解析手法として、Radiomics手法の一つであるテクスチャ解析による検討も開始した。解析は手術により治療を行った口腔扁平上皮癌一次症例81例を対象とし、31種類のテクスチャ因子および臨床病理学的因子を対象に、予後予測に有用な因子を統計手法を用い抽出した。予後の評価はOSおよび無再発生存率(DFS)を用い、結果としてOS、DFSともにテクスチャ因子のうち、Entropyが有意な予後予測因子であることが明らかになった。本結果について本年度は学会発表および論文投稿を行った。また追加研究として、頸部リンパ節転移診断におけるテクスチャ解析の有用性についても検討を行い、その有用性を学会にて報告した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画当初に予定していたHIおよびHFによる予後評価についての研究は終了し、論文が国際誌に掲載された(Eur J Radiol. 2019 May;114:99-104)。その後、テクスチャ解析を応用した予後評価についての研究を実施し、現在投稿論文はArticle in pressの状態である(J Oral Maxillofac Surg)。概ね研究計画としては順調であり、現在、頸部リンパ節転移診断への応用や薬物療法の効果予測への応用についての検討も開始している。
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今後の研究の推進方策 |
テクスチャ解析は単一の画像から多くの特徴を定量化することが出来、その汎用性は高い。当初は原発腫瘍のPET画像を中心に解析を行ってきたが、頸部リンパ節転移や薬物療法への効果判定等その応用範囲は広いと考え、現在追加の研究を開始している。既に解析を終えた一部の結果でも有用な結果が示されており、次年度ではさらなる解析をすすめるとともに、国内外の関連学会での発表、論文投稿を行っていく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初の予定では画像解析に加え、病理学的な予後予測因子についても解析することを計画していたが、研究計画に変更があり、現時点では病理学的な検索は行っておらず、これらの費用を使用しなかったため、次年度使用額が生じた。また、学会発表の為の旅費として予定していた費用が生じなかったこと、論文投稿費が生じなかったことも理由となっている。これらの費用は次年度、追加研究に必要な物品購入や、研究成果の報告にあたって使用する予定である。
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