研究課題/領域番号 |
19K17212
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研究機関 | 大阪薬科大学 |
研究代表者 |
近藤 直哉 大阪薬科大学, 薬学部, 助教 (80756172)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 核医学イメージング / ペプチド / GLP-1 / インテグリン |
研究実績の概要 |
ペプチドは高い標的認識性を有し、核医学領域でも診断用・治療用のプローブとして有効である。一方で、生体内での不安定性が動態に影響すること、放射標識後の精製が困難であることなど中分子であるペプチド特有の性質が診断薬・治療薬の開発難度を高めており、有効な動態制御法、精製法の確立がペプチド性プローブ開発の発展に不可欠である。本研究では、不安定ペプチドの架橋による分解制御に着目し、「架橋構造のスクリーニングによる動態制御」と「放射標識によるペプチド安定化」の二点を特徴とした新たなペプチドプローブ開発法を提案し、ペプチドが直面する動態制御の困難さ、放射標識後の分離精製の問題点の解決を目指す。 昨年度までに1.架橋前では生体内安定性の低いGLP-1 (Glucagon like peptide-1)ペプチド 2.架橋前では標的親和性を示さないRGD(Arg-Gly-Asp)ペプチドの二つをモデルとして設定し、両ペプチドを低分子構造により架橋したプローブを設計した。今年度は、1については、GLP-1ペプチドへのクリック反応を用いた架橋反応により、安定化したGLP-1(GLP-1st)を合成した。GLP-1stについて、SPR法を用いた解離定数の算出を行った。また、GLP-1stについて放射標識体を合成し、マウスへの尾静脈内投与の後、その体内動態を評価した。2については、RGDペプチドを架橋した構造である二環性ペプチドについて、インテグリン発現細胞を用いたインビトロ実験、インビボ実験を行い、得られたデータからその有効性についての成果発表を国際学術雑誌上にて行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の研究計画では、GLP-1ペプチドについて、3年間の計画にて①ペプチド:既報のアジド誘導体ペプチドGLP-1azideをFmoc固相合成法にて合成 ②架橋構造:ペプチドに導入したアジド部位とクリック 反応のためのアルキン、安定化度を左右する安定化制御部位、放射標識部位の三素子からなる架橋構造を設計・合成 ③標識・合成:①、②を結合させ、安定化GLP-1ペプチドライブラリを構築。安定化制御部位の条件(嵩高さ・電荷など)について検証。投与液調製に直結する標識条件・精製条件を最適化し、臨床適用可能性を踏まえた簡便性・安全性を精査する。④インビトロでの標的認識性検証⑤インビボでの動態・分解評価と設定しているが、既に1種類の架橋構造について、インビボでの動態評価まで実施済みであり、親和性や安定性について基礎的なデータの取得・手法確立を達成している。一方で、今年度に開発したGLP-1stについて、十分なGLP-1受容体への親和性や安定性が確保できていない点が懸念材料であるため、今後の方策として、別の架橋構造や母体ペプチドの採用を選択肢として考えている。また、現在までに、安定化GLP-1ペプチドの比較対象となるExendin‐4を母体としたペプチドプローブについて開発し、成果について論文化した。RGDペプチドを用いた二環性ペプチドの検討については、インビトロ、インビボ実験を介して有効性を提唱でき、既に論文化による成果報告を達成している。以上の研究について更に掘り下げることで、本研究の目的である、「架橋構造のスクリーニングによる動態制御」と「放射標識によるペプチド安定化」の二点を特徴とした新たなペプチドプローブ開発法の提案が今後、十分に可能であると考えている。 したがって、現在までの進捗状況は「おおむね順調に進捗している」と評価している。
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今後の研究の推進方策 |
RGDペプチドについては、二環性プローブの有効性について論文化を達成できたため、今後は、末端ではなく、二環性プローブの架橋部位への放射標識法についての可能性を追求する。架橋部位への標識によるインビトロ・インビボでの性能の変化について精査し、標識による親和性の制御を基盤としたペプチド性イメージングプローブ開発法について検証を推進する。 GLP-1ペプチドについては、上記の通り、第一弾として開発したGLP-1stについて、放射標識体の合成や、インビトロでの物性評価、インビボでの動態評価について手法確立に成功したため、今後は様々な架橋構造を設計・合成し、安定化度と体内動態の関係性を精査する。これらインビトロ・インビボ評価により得られた知見は随時薬物設計にフィードバックし、架橋構造について最適化する予定である。また、場合によっては、GLP-1とは異なる新規ペプチドを母体として採用することを考えている。上記実験により、分解制御を基盤とした動態制御によるペプチド性イメージングプローブ開発法について有効性を実証する。 以上の検証により、親和性・安定性の架橋構造による制御を特徴とした新たなペプチドプローブ開発法の提案を推進していく予定である。
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