研究実績の概要 |
本研究ではまず、免疫組織学的手法を用いて、卵巣原発粘液性腫瘍の悪性度とムチンコア蛋白、αGlcNAcの発現形式を調べた。すると、悪性度が進行するにつれて、MUC6とαGlcNAcの発現が低下することが分かった。特にαGlcNAcの低下が顕著であった。この結果より、卵巣原発粘液性腫瘍の悪性度の進展にαGlcNAc喪失が深く関係しており、αGlcNAcが腫瘍抑制に働いている可能性が示唆された。この結果については、Acta Histochemica et Cytochemica誌に論文として掲載された(Ayumi Ohya et al. Decreased Gastric Gland Mucin-specific O-glycans Are Involved in the Progressionof Ovarian Primary Mucinous Tumours. Acta Histchem. Cytochem. 54: 115-122,2021)。 次に卵巣原発粘液性腫瘍において、MR所見および腫瘍マーカーと悪性度との関係について調べた。その結果、腫瘍内の嚢胞腔がT2強調像で低信号を呈し、かつT1強調像で高信号を呈する場合、境界悪性や悪性の可能性が高いことが判明した。そして、単変量解析にて有意となった画像所見、腫瘍マーカー所見を合わせ、悪性度診断のための分類木を作成するに至った。この結果については、 Abdominal Radiology誌に論文として掲載された(Ayumi Ohya et al. Useful preoperative examination findings to classify the grade of ovarian primary mucinous tumor. Abdominal Radiology. 46: 2393-2402, 2021) その後、MRIにて腫瘍内の嚢胞腔の信号が悪性度が関係していることから、嚢胞内の信号からムチン発現、αGlcNAcの発現パターンを予想できないか、模索したが、解析のための症例数が足りず、現在も症例の蓄積を行っているところである。
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