研究実績の概要 |
2020年度は、昨年度求めたtop-up線量(=24Gy)に、X線単独照射(4Gyずつ5群に段階化)、中性子線単独照射(60、90、120分間の照射時間で線量を段階化)、およびホウ素薬剤として125, 250, 500 mg/kgのBPAを投与した後に60分間の中性子線を照射(BNCR)する実験を行い、照射12週後の骨強度を3点曲げ試験にて解析した。その結果、X線単独照射では8Gy以上、中性子線単独照射では90分間以上、およびBNCRではBPA125 mg/kg以上の投与により骨強度が線量依存性に低下した。このうち60、90、120分間の中性子線単独群における非ホウ素線量はそれぞれ1.1Gy, 1.6Gy, 2.2Gyであった。また昨年度求めた血液および骨中のホウ素濃度から、125, 250, 500 mg/kgのBPAによるホウ素線量をそれぞれ1.3Gy, 2.5Gy, 4.7Gy(血液)、0.7Gy, 1.2Gy, 2.5Gy(骨)と算出した。 そして各実験によって得られた結果から線量ー骨強度グラフを描き、それぞれの直線の傾きの比を求めることにより、骨強度の低下を生物学的エンドポイントとした際のBNCRによるX線等価線量への換算係数(compound biological effectiveness factor:CBE factor)を求めた。CBE factorは2.15(骨の血液に照射されるホウ素線量を使用した場合)および4.09(骨に対するマクロのホウ素線量を使用した場合)と決定した。 また骨強度低下のメカニズムを解析するため、BPAの骨への分布を精査するαオートラジオグラフィーを開始した。現在のところ、BPAは成長軟骨板を含む骨端部や皮質骨辺縁部に集積する傾向にある知見を得ている。
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