2021年度は、ホウ素薬剤(BPA)の骨での局在を可視化するため、αオートラジオグラフィー(ARG)およびレーザーアブレーション誘導結合プラズマ質量分析(LA-ICP-MS)を実施し、さらに照射による骨強度低下の詳細を解析するためにマイクロCTによる形態解析を実施した。 ARGおよびLA-ICP-MSでは、125、250および500 mg/kgの3用量に段階化したBPAをマウス皮下に投与し、その30分後に脛骨を採取した。その結果、ARGおよびLA-ICP-MSのいずれにおいても、成長軟骨板や骨幹端部の海綿骨領域に多くのホウ素が集積した。次いで、骨髄腔内にもホウ素の分布が確認された。皮質骨へのホウ素分布は全体的に乏しかったが、高精細に解析することで骨外膜および骨内膜には若干の局在が確認された。2つの測定法によるいずれの部位においても、BPA用量依存性のホウ素の集積が認められた。 マイクロCTにおいても同様のプロトコルによりマウス脛骨を採取し、脛骨全体を撮影後に骨幹端部および骨幹部に分けて解析を行った。骨幹端部における海綿骨量はtop-up線量(=X線24 Gy)の影響により非照射群と比較して有意に減少し、X線群、中性子線群およびホウ素中性子捕捉療法(BNCT)群間において有意差は認められなかった。皮質骨量および皮質骨幅は骨幹端部および骨幹部のいずれにおいても、top-up線量の影響により非照射群と比較して有意に増加したが、各群におけるさらなる照射により線量依存性に減少に転じた。この減少の程度は中性子線群において最も少ない照射線量で低下し始め、次いでBNCT群、X線群の順であった。海綿骨および皮質骨における骨密度には、線量、放射線の種類いずれにおいても有意な変化は観察されなかった。
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