研究課題/領域番号 |
19K17231
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
渡邉 翼 京都大学, 複合原子力科学研究所, 助教 (30804348)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 中性子捕捉療法 / 免疫療法 |
研究実績の概要 |
腫瘍へのX線照射により様々な腫瘍免疫賦活効果がもたらされることが近年示されて おり、放射線治療がもつ抗腫瘍効果の新たな側面として見直されている。ホウ素中 性子捕捉療法(BNCT)とは中性子とホウ素原子核(10B)との相互作用により細胞殺傷効果の高い重粒子がミクロレベルの飛程で放出されることを利用した放射線治療の一種である。BNCTはX線照射と同様の免疫賦活効果があるかどうかはこれまで明らかにされていない。BNCTは細胞選択的な放射線治療であり、免疫賦活性が通常のX線よりも高い可能性がある。腫瘍モデルとしては当初OVAタンパク発現細胞を用いる予定であったが、OVA発現細胞の免疫原性が予定していたよりも弱く、良い実験モデルとはならない可能性がでてきたため、発現タンパクを同じく外来抗原でありさらにルシフェリン投与による画像化が可能なLuciferase発現細胞(B16-Luc)を用いることとした。2種類のマウス腫瘍モデル(B16-LucおよびSCC-VIIマウス由来扁平上皮癌)を用いてBNCTとCD8+T細胞の除去抗体を用いて、BNCT直後のCD8+T細胞の除去により治療効果が減弱することがわかった。また、抗PD1抗体との併用はBNCTにおいても生存期間の延長と抗腫瘍効果の増強を認めることがわかった。間違いなくBNCTにおいても抗腫瘍免疫が治療効果に関わっているという証拠が得られたため、来年度は予定通り次世代シーケンサを用いた大規模な解析にうつり、マルチオミクス解析を用いたBNCTでこそ賦活される宿主の免疫賦活反応の同定につなげたい。また、腫瘍組織内へ浸潤している免疫細胞のBNCT後の影響も調べていく予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画通りに進展している。外来抗原としてOVAを用いる予定であったが、同じく外来抗原であり同定が可能であること、および画像化ができるメリットを考え、Luciferaseを腫瘍細胞に導入し、解析を行うこととした。
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今後の研究の推進方策 |
新型コロナウイルス感染蔓延の影響で、現在の所、数ヶ月程度、予定していた中性子照射実験の開始が遅れる可能性がある。今後の研究の鍵はマルチオミクス解析であり、ウェット実験でのデータ取得後はテレワークでも可能である。現在の所、原則実験の開始が禁止されており予定通りの計画推進は難しいが、秋までにはデータを取得し、なんとか予定通り実験がすすむように努めたい。その間に、バイオインフォマティクスの知識・技術の洗練を行っている。
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