最終年度はオープンデータベース・兵庫県の複数の病院・関東の一つの病院の胸部単純レントゲン写真を用いて、新型コロナウィルス肺炎の診断を深層学習の人工知能(AI)で自動診断出来るかどうかを検討した。また、開発されたAIが放射線科医にとって有効であるかどうかも評価した。このために、前年度までの胸部単純レントゲン写真に加えて、最終年度では関東の一つの病院の写真180枚を追加して、この180枚でこれまで作成したAIの性能を評価した。追加された180枚の内訳は、新型コロナウィルス肺炎60枚・それ以外の肺炎60枚・正常60枚とした。この180枚をAI無しとAI有りの二種類の方法で計8名の放射線科医が評価した。評価指標としては、3クラス分類の正診率やクラスごとのArea Under the ROC Curve(AUC)を用いた。
評価の結果、深層学習のAI単体の正診率は0.733であった。また、AI無しの8人の放射線科医の平均の正診率は 0.696 ± 0.031であり、AIの方が正診率は高かった。クラスごとのAUCのうち、新型コロナウィルス肺炎 vs. それ以外の肺炎 or 正常のAUCにおいて、8人の放射線科医の平均のAUCはAI無しのAUCはAI有りのAUCよりも有意に高くなり(p-value = 0.0038)、AIの有効性が示された。一方で、ほかのニクラスのAUCについては有意な改善は得られなかった。上記の結果から、新型コロナウィルス肺炎の診断を深層学習のAIで行うことは有用であり、開発されたAIは放射線科医の診断能を有意に改善させることが分かった。
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