研究課題/領域番号 |
19K17234
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
山田 幸子 大阪大学, 医学部附属病院, 診療放射線技師 (40623054)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | dual-energy CT / 放射線治療計画 / 画質評価 / 撮影技術 / 線量分布 |
研究実績の概要 |
放射線治療計画に用いるCT画像には標的体積の決定と線量分布計算という2つの目的がある。前者ではヨード造影剤の投与が病変や解剖学的構造の描出に有用であることが多いのに対し、後者は電子密度を正確に得るために非造影での撮影が望ましい。すなわち両方の目的を達成するためには非造影および造影での撮影が必要となるが、本研究では1回の撮影を高低2種類のエネルギーの線質で行い、その情報をもとに造影および非造影画像を得ることを検討する。また線質の分離に伴う画像ノイズの上昇を逐次近似的画像再構成により低減させることを視野に入れるが、その際、従来の「見慣れた」画像から視覚的印象が大きく乖離すると、病変等の検出に悪影響を与えるため、画像が与える視覚的印象をできるだけ損なわない方法が必要で、本研究ではその点についても検討を加える。 当該年度は新型コロナウイルス感染拡大に伴うCT装置の運用制限が引き続き継続しており、造影データから良質な非造影画像を得るための実験的検討を行うことができず、おもに理論面での考察が中心となった。線質分離にはいくつかの手法が存在するが、単純な管電圧による分離では低エネルギー側の重なりが解消できず、非造影画像の精度は低下するはずである。対して物理的なフィルタを併用した場合には線質分離の効率はよくなるが、放射線治療計画という実運用面では難がある。そこで線質分離の方法と得られる非造影画像の電子密度推定精度についてモンテカルロシミュレーションで評価することを検討した(実施中)。画質の視覚的印象については、CT画像とヒト視覚系のダイナミックレンジの違いを考慮にいれた画質評価法を提案し、視覚的画質評価結果と良好な相関を得ることができた。従来の物理的画質評価はCT値に対して行うが、この場合は視覚的印象の差を捉えることは著しく困難で、本研究で提案するような新たな画質指標が不可欠であると考える。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
本研究での実験で重要な役割を果たすCT装置が、新型コロナウィルス感染拡大の影響で前年度から引き続き、実験での使用が難しい状態が続いており、実施予定の実験が行えていない。当該実験は当該CT装置でしか行えず(他のCT装置では代替できず)、実験再開の目途は立っていない。画質評価など、周辺課題は想定以上の進捗があったものの、全体としては遅れが目立ってきた。
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今後の研究の推進方策 |
基本的には当初の研究計画に従い、研究を進めていく予定である。感染拡大の影響が終息すれば、直ちに実験を開始する。それまでは実験を必要としない理論面での考察やシミュレーション等による検討、また画質評価などに関する検討を行い、研究成果の最大化を図る。
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次年度使用額が生じた理由 |
実験に遅れが出たため、ファントム、計算機、ソフトウェア等の購入を見送ったこと、また感染拡大を受けて遠隔地での学会参加を見送ったことによる。次年度は計算機類の購入と成果発表のための旅費が主たる支出になる予定である。
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