研究実績の概要 |
本研究課題の目的はマルチモーダルMRI解析を用いて、パーキンソン病(PD)診断評価法の開発とPD病態の神経基盤を解明することである。本年度は下記検討を行なった。 神経突起イメージングや自由水イメージングと呼ばれる新たな拡散M R I解析とMT-satと呼ばれるミエリンイメージングを組み合わせたマルチモーダルM R I解析により、運動合併症や衝動制御障害を伴うPDでは大脳白質構造が通常のPDよりもむしろ保たれるという新知見を得た(Ogawa T, Kamagata K, et al. Parkinsonism Relat Disord. 2021; Takeshige-Amano H, Kamagata K, et al. Ann Clin Transl Neurol. 2022)。 さらにマルチモーダルM R I解析を用いて、P D及び臨床的にP Dと鑑別が問題になる多系統萎縮症パーキンソニズム型との白質障害のパターンの違いを精度良く検出できることを示した(Ogawa T, Kamagata K, et al. NPJ Parkinsons Dis. 2021)。 さらにSubtype and Stage Inference (SuStaIn)と呼ばれる疾患進行モデル手法を用いて、臨床的にP Dとの鑑別が問題になる進行性核上性麻痺、大脳皮質基底核症候群における皮質萎縮の進行パターンを精度良くモデルできることを示した(Saito Y, et al. Front Neurol. 2022)。 また本課題に関連した技術開発として、度々P D患者のM R I撮像時に問題となる患者の撮像中の動きを精度良く補正する撮像技術の精度検証を行い、実際にP D患者のM R I撮像に有用であることを示した(Fujita S, Kamagata K, et al. Neuroimage. 2022)。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
今年度の研究計画は、統合的なマルチモーダル解析を行い、客観的PD診断を可能とする定量値算出を行い、重症度・罹病期間との相関解析を行い、併せて定量値が変化する脳領域を抽出し、PD病態の神経基盤同定を目指すというものであった。 計画に沿って、マルチモーダルM R I解析により、P Dとの鑑別が問題になる他の類縁疾患との客観的鑑別診断に有用と思われる手法の開発を行なった(Ogawa T, Kamagata K, et al. NPJ Parkinsons Dis. 2021; Saito Y, et al. Front Neurol. 2022)。さらにPD病態の神経基盤同定を目指して、運動合併症や衝動制御障害を伴うPDの神経基盤同をおこなった(Ogawa T, Kamagata K, et al. Parkinsonism Relat Disord. 2021; Takeshige-Amano H, Kamagata K, et al. Ann Clin Transl Neurol. 2022)。しかし、コロナ禍で研究補助員の勤務日が減ったため、画像解析の進捗が当初のマイルストーンよりやや遅れており、マルチモーダル解析によるPDの客観的診断法開発が完全には完了していないため、進捗はやや遅延している。しかし、期間延長により当初の目的を達成することは十分可能であると考える。
|