経カテーテル的に液体の状態で注入し、血管内で固形化するタイプの塞栓物質は、デバイスの種類を問わず使用可能であり、かつ、カテーテル遠位の塞栓が可能という点でも有用性が高い。一方で、現在存在する液状塞栓物質 NBCAやONYXは保険適用外であり、NBCAは手技的な難度の問題と重篤な合併症リスク、ONYXは有毒な有機溶媒を使用した薬剤である点からも、改良の余地がある。 申請者はカルシウムイオンと反応し強固なゲルの膜を形成するアルギン酸ナトリウムに着目し、開発を実施した。アルギン酸ゲルは反応が迅速すぎるために膜の内部に未反応薬剤を生じてしまう点で大きな課題があり、これを申請者は前年度までに生体由来の界面活性物質であるアルブミンを用いて泡沫化することで、薬剤の表面積を増やすとともに、ゲル内部に生じる未反応薬剤を最小化する手法を考案した。この手法により同時に、薬剤はX線陰性造影剤としての視認性を獲得することとなった。 今年度は薬剤の混合比を最適化するとともに、ウサギ 6匹を用いた動物実験を実施した。ウサギの腎動脈に対して、この新規塞栓物質を用いることで良好な塞栓効果が得られることを確認した。 これらin vitro、in vivo実験の成果は、2022年度のIVR学会総会にて発表予定であり、近日中に専門誌への投稿を予定している。
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