Single photon emission computed tomography(SPECT)の画像統計解析を用いた我々の予備的検討において、パーキンソン病(PD)治療薬による症候改善に連関して脳血流が変化する可能性が示唆されていた。そこで、抗PD薬がもたらすPD運動症候改善に連関する局所脳血流変化を同定することを目的に研究をおこなった。PD患者に運動症候評価を抗PD薬投与前後で行ない、局所脳血流変化と運動症候改善の関係について解析した。この結果、抗PD薬により、全症例で運動症候は改善。被殻、淡蒼球、黒質(SN)、外側膝状体(LG)、内側膝状体(MG)、視床枕、前腹側核、後腹側核、島、一次視覚野、赤核、体性感覚連合野の血流が増加する一方、前頭皮質では背外側前頭前皮質でわずかな増加をみたものの前帯状皮質、下前頭回、眼窩前頭皮質において血流は低下した。皮質部と比べ、脳深部は大きく血流が変化する傾向であった。SN・LG・MG血流増加の程度は、運動症候改善の程度と相関した。サブ解析の結果、抗PD薬によるSN・LG血流反応性は認知症に影響されるが、MGの場合認知機能によらず安定した反応を示した。本研究では、PD患者における抗PD薬投与による局所脳血流変化を示すとともに、抗PD薬がもたらすPDの運動症候改善に連関した局所脳血流変化を示す領域としてLGとMGを新たに見出した。 これら結果は、PDの運動症候改善に連関した局所脳血流変化を示す領域がPD進行の客観的な臨床指標となり得る可能性を示唆するほか、視聴覚刺激を用いた治療との関連から、LGおよびMGに焦点をあてた脳機能研究がPDの病態生理のさらなる解明のきっかけとなる可能性も考えられた。 これら研究活動に必要な物品・学術情報を得るため研究費を活用した。
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