研究課題/領域番号 |
19K17250
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研究機関 | 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構 |
研究代表者 |
梅原 健輔 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構, QST病院, 研究員(定常) (90825077)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 超解像 / ノイズ除去 / 画像変換 / 敵対的生成ネットワーク / 医用画像処理 / 放射線技術学 / 医学物理学 / MRI |
研究実績の概要 |
MRIは高い組織コントラストを有し,放射線被ばくがないことから現代の画像診断において欠かすことができないモダリティの一つである.しかし,これまでに種々の高速撮像法が開発されているにも関わらず,長時間撮像を要することはいまだにMRIの大きな課題の一つとなっており,被検者の負担軽減と検査効率の向上を目的に,さらなる撮像の高速化が強く求められている.そこで本研究では,撮像時間の短縮に資するAI画像処理技術を開発し,その有用性を評価する.令和元年度の研究実績は以下の通りである. 1. 統合型AIイメージングの要素技術開発 本研究初年度となる令和元年度では,短時間撮像したMR画像の画質改善を行うために,敵対的生成ネットワーク(Generative Adversarial Network:GAN)を用いて,超解像(Super-Resolution),ノイズ除去(Noise Reduction),画像変換(Image-to-Image Translation)の枠組みを統合したアプローチが実現可能な要素技術を構築した. 2. 前向き観察研究による初期的評価 共同研究先の国立循環器病研究センターにて研究参加の同意が得られた健常ボランティア20名を対象に,2種類のプロトコル(短時間・通常時間撮像)で撮像した頭部MR画像を評価に用いた.本研究で構築したGANを用いて,短時間撮像した画像から通常時間で撮像した画像への変換・復元を試みた結果,通常プロトコルの約40%以上の撮像時間短縮を実現しながら,通常時間で撮像した画像に匹敵する高画質な画像生成に成功した.加えて,提案手法は畳み込みニューラルネットワーク(Convolutional Neural Network:CNN)を用いた従来手法の問題点であったテクスチャの過度な平滑化を抑制でき,高周波成分の復元に優れることを明らかにした.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
1. 研究計画 令和2年度以降に実施予定であった前向き観察研究が,連携している国立循環器病研究センターの協力により当該研究初年度である令和元年度に多くの撮像が完了し,次年度以降に実施予定であった臨床的な有用性の評価に既に着手できている.その内容の一部を今年度に国内学会および国際会議にて報告した. 2. 外部評価 今年度に得られた研究成果の一部を,2019年12月に米国・シカゴにて開催された北米放射線学会(RSNA2019)にて発表し,採択演題の上位5%以内に授与されるCum Laude Awardを受賞した. 以上より,現在までの進捗状況は当初の計画以上に進展していると評価した.
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今後の研究の推進方策 |
現在の臨床機に搭載されている普及型の高速撮像法(圧縮センシングなど)との画質や特性を多面的に比較検討し,国際会議報告および原著論文として公表していく.加えて,適応範囲拡大を視野に入れた新たな前向き観察研究を実施するなど,社会実装に向けた検討を引き続き推進する.
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次年度使用額が生じた理由 |
当該研究課題に加えて,所属研究機関内公募の競争的資金を獲得したため,当初計上していた計算用ワークステーションの購入費用の予算の一部に未使用額が生じた.また,当初計上していた国際会議(RSNA)参加費に関しては,筆頭演者として演題が採択されたため参加費が不要となったことから未使用額が発生した. 残予算は次年度以降に使用する研究成果の発表に係る経費(論文投稿料や旅費等)や計算用のグラフィックスプロセッシングユニット(GPU)の増設など計算機環境の増強に係る費用に充てる予定である.
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