研究課題
MRIは優れた組織コントラスト分解能を有し,高度化する現代の医療において欠くことのできないモダリティの一つである.これまでにも種々の高速撮像法が開発され臨床に応用されているが,被検者は撮像中に未だ長時間の静止が求められる.したがって,被検者の負担軽減や検査効率の向上という側面からもMRI撮像のさらなる高速化が求められている.そこで本研究では,ディープラーニングに基づく新規AIイメージング技術を開発し,その臨床的有用性を多面的に検証することで,MRIの超高速撮像の実現を目指す.3年計画の2年目にあたる令和2年度は,令和元年度に構築した敵対的生成ネットワーク(generative adversarial network: GAN)に基づく画像処理の有用性を評価するために,現在普及している高速撮像法の一つである圧縮センシング(compressed sensing: CS)と比較検討した.グラディエントエコー(gradient echo: GRE)で撮像されたT2*強調画像(T2*-weighted image: T2* WI)と磁化率強調画像(susceptibility-weighted imaging: SWI)を対象に,GANとCSの画質を比較した.定量的画質指標である構造的類似性指数(structural similarity index: SSIM)による評価の結果,T2* WI,SWIともにGANのSSIMはCSのSSIMよりも有意に高値を示した.また,複数の放射線科医による読影実験の結果では,2D-GREで収集したT2* WIにおいてGANはCSと比較すると特に良好な画質が得られていることが明らかとなった.提案手法はCSと比較すると短時間で再構成ができることから,画質に加えて処理時間の観点からも既存の高速撮像法と比較して一定程度の有用性があることが示された.
2: おおむね順調に進展している
(1)MRI超高速撮像のためのAIイメージングネットワークの構築,(2)実用化に向けた臨床的有用性の評価のどちらにおいても,計画通りに研究が進捗したため.
健常ボランティアスタディによる評価で一定程度の有用性が明らかになったため,次年度では疾患群による評価を行うための新たな前向き観察研究を実施する.
新型コロナウイルス感染症の影響で,参加予定だった国内・国際学会の多くがWeb開催となったため,旅費として計上していた予算の一部に未使用額が生じた.次年度の旅費や計算機環境の増強等に使用する.
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