肝線維化の評価を非侵襲的に行うことができるMRエラストグラフィーは、肝臓の硬度を反映することで肝線維化の程度を評価できると報告されている。しかし、肝の硬度は線維化だけでなく、さまざまな因子の影響を受けており、肝線維化の情報のみを描出するためには他の因子を特定する必要がある。本研究では肝の硬度に影響を与える因子を定量化し、線維化のみの情報を抽出すること、また、MRエラストグラフィーを用いない新たな肝線維化評価法を確立することが目的である。 肝臓の炎症はMRエラストグラフィによる肝の硬度に影響を与えるという報告がある。そこで我々は粘弾性体に対するMRエラストグラフィーの外部周波数依存性に着目し、その変化量⊿Gが肝の炎症と相関を示すことから、⊿Gが肝臓の炎症を評価する有用なパラメータであることを証明した。 一方で、MRI固有の値であるT1rho値は肝の線維化で生じる細胞外マトリクスを定量することができるため、肝線維化の新たな指標として期待されている。しかしながら、T1rho値は化学交換の影響を受けるため、本研究ではT1rho dispersionがより鋭敏に肝の線維化を反映すると考え、基礎的研究を行った。患者と健常者の間でT1rho dispersionの差を比較したが、両者の間には有意な差はみられなかった。健常者において、IVIM解析の拡散係数DはT1rho値と正の強い相関を示したことから、健常者ではT1rho値は動きの遅いプロトン、すなわち高分子の組成を反映していることが示唆された。
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