研究実績の概要 |
令和4年度はウサギ虚血肢モデルを用いて、①炭酸ガス吸収療法群(n=5)、②コントロール群(n=5)の比較検討を行った。ウサギ虚血肢モデルの作成は、血管内治療手技を用いて左浅大腿動脈を塞栓し下肢血流を遮断した。全例でウサギ虚血肢モデルの作成に成功した。レーザー血流計を用いて下肢血流を定量的、定性的に評価し、虚血肢(左下腿)は非虚血肢(右下腿)と比較して血流の低下を認めた。①炭酸ガス吸収療法群では、2日に1回、合計7回の経皮的炭酸ガス吸収療法を行った。②は同様の手技を空気で行った。虚血肢作成手術から2週間後に、レーザー血流計での血流評価を行い、安楽死させた。両側の下腿の筋肉を摘出し、病理学的検討(HE染色、免疫染色: CD31、VEGF、 HIF-1α、PGC-1α)を行った。 結果)臨床的に塞栓後の左下肢の虚血、浮腫を1例を除いて見られた。しかし、①②群で有意差は見られなかった。レーザー血流計では、虚血肢 / 非虚血肢の血流比を検討した。①②群ともに、血流比は塞栓術前(①0.98 vs. ②1.03, , p=0.55)、塞栓術後(①0.71 vs. ②0.82, p=0.42)に差は見られなかった。1週間後(①1.10 vs. 0.88, p=0.31)、2週間後(①1.12 vs. ②1.03, p=0.30)で有意差を認めなかった。病理学的にはHE染色で1例を除き、左下肢で筋肉の萎縮、血管内皮細胞の減少、壊死を認めた。CO31染色では、左下腿の筋肉ではCD31 の毛細血管への発現が低下していることが示唆された。しかし①②群で有意差はなかった。VEGF、 HIF-1α、PGC-1αは検討に有用と思われる結果は得られなかった。 研究全体の総括) 血管内治療によるウサギ虚血肢モデル作成は実行可能な方法であった。しかし、経皮的炭酸ガス吸収療法の効果は認められなかった。
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