研究実績の概要 |
放射線治療システムを形成する各種装置について, 治療品質の妥当性を第三者的に評価し, 放射線治療技術の均てん化を目指すことが重要である. これまで放射線治療用加速器の出力線量測定や, 人体模擬ファントムを使用した総合試験はすでに第三者評価方法として確立されており, 放射線治療品質の評価方法として運用されている. しかし, 体内の不均質補正に絞って第三者評価を実施した報告はなく, 調査方法が確立されれば総合試験では判別できない潜在的なエラーを検出できる可能性がある. 体内の不均質補正を行う場合, 通常は10種類程度の組織等価物質を挿入したファントムをCT撮影し, そのCT値と組織等価物質の物理密度と電子密度を使用してCT値校正関数を作成し, 放射線治療計画装置に登録する. 本研究では, 実際に多数の組織等価物質を撮影する方法ではなく, 2種類の異なる材質のCT値から理論的なCT値校正関数を作成する調査方法を開発した. まず, 第三者評価判定に必要な許容値を設定した. 次に, 調査方法を開発するため, 複数の放射線治療施設の協力を得て, 市販のCT画像評価用ファントムを各施設が所有するCT装置で撮影し, 取得したCT画像を用いて理論的なCT値を計算する方法を確立した. また, 調査に必要なファントムの材質・形状について検討し, 実際に郵送可能な試作用ファントムを製作した. 製作したファントムを用いて, 各放射線治療施設のCT装置で撮影し, 理論的なCT値校正関数を作成した. そして, 理論的なCT値校正関数と各施設の放射線治療計画装置に登録されたCT値校正関数とを比較し, 調査の妥当性を検討した. 第三者評価判定に必要な各臓器タイプに対する許容値の設定, 試作用ファントムの開発から調査手法の確立までの研究成果を英語論文として発表した.
|
次年度使用額が生じた理由 |
初年度は研究を推進するための研究環境整備や, 試作用ファントムの製作, 英語論文のオープンアクセス化するための費用として研究費を使用した. 学会発表用の費用として考えていた費用を, オープンアクセス掲載料として使用した結果, その差額が次年度使用額として生じた. 初年度の差額によって生じた次年度使用額と当該年度分を合わせ, 改良型ファントムの製作や学会発表の費用, 英語論文の校正費用, 研究環境整備として使用する予定である.
|