研究実績の概要 |
背景と目的:世界的に増大傾向である小径腎癌は一般的に予後良好であるが、高悪性度の一部は転移し予後不良となるため、予後不良群を抽出するリスク層別化因子の同定が望まれている。本研究では、ゲノムプロファイリングとperfusion CT (pCT)やMRIの所見との関係性を評価し、有効なバイオマーカーとして利用できるイメージング因子の同定を試みた。 方法:pCT、MRIを施行した淡明細胞癌18例に対して生検組織からRNAを抽出し、次世代sequenceを施行しmRNA発現量を求めた。本研究では腎癌におけるゲノムプロファィリングを元とした予後因子に細胞周期(CCP)スコアとclear cell type A/ clear cell type B (ccA/ccB) サブタイプを採用した。CCPスコアは腎癌における転移の独立予後因子、ccA/ccBサブタイプではccAに分類された症例はccBに対して予後が良好なことが先行研究にて判明している。 腫瘍の画像評価では、腫瘍径と脂肪・偽被膜の有無を評価し、また腫瘍の画像パラメータ(Ktrans・Kep・VE・VP・ADC)を測定した。これらのパラメータと腫瘍径、RNA発現との関連性を評価した。尚、既存のgene setとの関連性に関してはGSEAを用いたenrichment解析を行った。 結果:腫瘍径はKepと正の相関、VE, VP, ADC, 血管新生のRNA発現と負の相関を示した。CCPスコアはKtrans、Kep.と負の相関を示した。ccAに分類された腫瘍ではMRIで偽被膜が観察しやすい傾向があった。 結論:腫瘍径は腫瘍の低灌流と関連があったが、ゲノムプロファイリングをもとにした予後因子との関連は見られなかった。KtransやKepといったパラメータや偽被膜といった腫瘍の特徴は遺伝子発現を背景にしたリスク層別化を可能にするかもしれない。
|