腎癌の多くは通常、心血管イベントのリスクとなりうる内科的疾患が併存している高齢者に生じることが多く、局所制御と残腎機能のバランスを考慮した戦略が重要である。現在、小径腎癌に対する戦略として、①手術療法、②焼灼療法、③積極的監視療法が存在し、臨床的に決定される。現在、腫瘍径のみが画像的な指標となっているが、腫瘍径が大きくなる前に他臓器に転移し、予後不良となる高悪性度の増殖病態を呈するものも存在するため、腫瘍径のみでの評価には限界がある。私達はこのような予後不良な病態を示す腎癌に対して、遺伝子発現をもとにした画像的特徴の同定に成功した。 一方で、小径腎癌の治療戦略のもう一つの柱である正常腎機能の温存に関してであるが、治療戦略の一つである焼灼療法(凍結療法)は、残腎機能の温存と腫瘍の局所制御の両立に優れているとされている。しかし、術後透析導入の可能性のある重度慢性腎不全患者における凍結療法後の残腎機能の温存の程度に関しては限られた臨床的なデータしか存在しないため、治療戦略における客観的な指標が不十分である。そこで、我々は高度腎機能障害症例の治療前後の腎機能の推移と透析導入に関してのリスク因子を調査した。 方法:2014/4~2020/3までの凍結症例のうち、非透析・高度腎機能障害(CKD)症例を後方視的に観察した。術後の透析導入に対する術前のリスク因子に関してはcox比例ハザードモデルを用いた。 結果:患者は18名であり、4例で術後に透析となった。術前腎機能がCKD grade5の場合、Hazard ratioは36.29であり、透析のリスク因子である可能性が示唆された。一方で一部の症例で施行された造影剤を減量した造影CTや血管造影はリスク因子とならなかった。 結論:CKD grade5症例では凍結療法により透析導入を回避することが難しい可能性が示唆された。
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