研究課題
本研究の目的は常染色体優性多発性嚢胞腎(ACPKD)に対する経カテーテル的腎静脈塞栓術(TRVE)の臨床応用に向け、基礎的実験を行うことである。腎静脈塞栓術は現時点で動物実験・臨床例の報告はない。大型動物(イヌ)の腎臓に対して、その安全性、臨床効果、腎機能に与える影響、至適塞栓物質および合併症について検討を行う。常染色体優性多発性嚢胞腎(ADPKD)では経年的に腫大し続ける腎臓による他臓器圧迫症状が透析導入後や腎移植時に問題となる。本邦おける2013年の集計で慢性透析患者のうちADPKD患者は約900人(2.5%)を占めている。従来、外科的切除や嚢胞穿刺術が行われてきたが、より低侵襲である動脈塞栓術(TAE)の報告が2002年に本邦より発信されている。TAEでは様々な塞栓物質(コイル、エタノール、スポンゼル、NBCAなど)による腎動脈塞栓術が報告されているが、合併症として、疼痛・発熱はほぼ必発で、稀ではあるが発生すると重篤な腎膿瘍の発生や腎血管性高血圧などの合併症もあり、結果として外科的切除となる報告も散見される。ADPKDに対するTAEの位置づけは、腫大した腎容積の縮小による腹部圧迫症状の軽減である。一方、腎静脈塞栓術の報告はなく、腎動脈塞栓術と比較して合併症・副作用の少ない治療法としての確立を目指す。まず腎静脈塞栓術の安全性と腎容積縮小率、腎容積縮小が出現するまでの期間、至適塞栓物質および方法の選択、重篤な合併症の発生率の評価するため、片腎塞栓モデル(AVP単独群)を作成し、6か月の経過で腎萎縮の経時的変化を確認した。さらに複数頭腎静脈塞栓群(AVP単独群)と腎動脈塞栓群(コントロール)、腎静脈塞栓群(AVP+末梢腎静脈側ゼラチンスポンジ注入群)を作成した。
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